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新吉原 ~『金草鞋』初編下巻~

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※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション
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【原文】

新吉原


 聖天町《しやうでんまち》より土手へ上がり、日本堤《にほんづゝミ》を真つ直ぐに、吉原に入れば、早ヤ火点《ひとも》し頃、中之町《なかのてう》の茶屋、掛け行灯《あんどう》、一様に点《とも》し、夜店にハ弾き立つる菅掻《すがゞき》の三味線《さミせん》、人の心を浮かし、二人共夢中となり、見る物毎《ものごと》に珍しく、矢鱈《やたら》に其処《そこ》らを覗《のぞ》き回りて、

狂「御洒落《おしやらく》ハ 買ひたいけれど 銭《ぜに》惜しや 見たばつかしで 吉《よし》[止《よ》し]原にせう

延高
「コリヤ、はあ、田舎の御洒落さあとは、でかく違い申すハ。
 あの文《ふミ》さあ書いて居めさる御洒落さあハ、幾《いく》らつん出したら買ハれますべい」

案内
「此処《こゝ》は交《まじ》りだから、正面ならバ金一分《きんいちぶ》さ」

延高
「そりヤア、安いもんで御座らア。
 ひつかり/\する良《ゑ》い衣装のう引っ張って、芝屋の御姫さあ見た様《やう》な御洒落さあを、たつた一分で、己《うら》の様《やう》な者がひん抱《だか》へべいなら、こんなア安い物ハ御座らない。
 そふして見ちヤア、金さあハ大切《てへせつ》ない物《もん》だア。
 壱分が惜しくなり申した、置きますべい」

「ヲヤ/\向かふの新造《しんぞう》が欠伸《あくび》をする。大きな口だア」

「何だあの花魁《おいらん》ハ、竜宮の火の見に引っ掛ゝつた土左衛門《どざへもん》を見る様《やう》に、強的《ごうてき》に高く止まつてゐらア」

「コウ、浜の屋の人、藤作《とうさく》さんに、また手水場《てうづば》へ行つて寝なんすなと、そふ言つてくりヤ」

「コリヤ、美しい花魁だ。
 我等《われら》、男の縮《ちゞ》れ髪だが、思し召しハ有るまいか」

【現代語訳】

新吉原日本橋近くから浅草裏に移転したため、新吉原と呼ばれるが、単に吉原と呼ばれることが多い]

 聖天町《しょうでんまち》から土手に上がり、日本堤《にほんづつみ》真っ直ぐに進み、吉原に入ると、もう灯点《ひとも》し頃[日が暮れて灯《あ》かりを点《とも》し始める時間]で、仲之町《なかのちょう》引手茶屋《ひきでぢゃや》掛け行灯《あんどん》を一斉に点し夜店[夜間営業の女郎屋]で弾かれる菅掻《すががき》の三味線[女郎が店先で弾く三味線]が、人々の心浮かれさせます。
 延高と千久羅坊の二人夢中になり、見る物がすべて珍しく、やたらとそこらを覗《のぞ》き回りました。

狂歌
御洒落[女郎]買いたいけれど、お金惜しいので、見るだけで、よし[「吉《よし》」と「止《よ》し」を掛けた]にしましょう[やめておきましょう]

延高
「こりゃ、はあ、田舎の御洒落とは、えらい違いですなあ。
 あの、手紙を書いている御洒落は、いくら出したら買えるべ?」

案内人
「ここは交《まじ》り見世《みせ》[半籬《はんまがき》とも。大籬の次のランクの遊女屋]だから、正面にいる女郎金一分《きんいちぶ》[金一両を十万円とすると、二万五千円]だ」

延高
「そりゃあ、安いもんでござるなあ。
 ピカピカ良い衣装を着て、芝居のお姫様のような見た目御洒落を、たった一分オラのような者抱けるのなら、こんな安いものはござらん。
 お金さえあればそういうことできるかと思うと、お金というものはやっぱり大切なもんなんだなあ。
 なんだか、一分惜しくなってきたので、買うのはやめておきますべ」

遊女屋を覗く客
「おやおや、正面新造《しんぞう》[見習い女郎]アクビをする。大きな口だなあ」

花魁
「ねえ、浜の屋[引手茶屋か。花魁などの高級な女郎を買う時は、茶屋を通してから女郎屋に向かった]藤作《とうさく》さん[茶屋の従業員か]に、お手洗いに行って寝てばっかりいないように、言っておいてくだされ」

浜の屋の人
「なんだあの花魁《おいらん》は、竜宮城火の見 櫓《やぐら》に引っかかった土左衛門《どざえもん》[水死体]でも見るようにオレたち接する
 ずいぶんお高くとまってますなあ[偉そうにしてますなあ]

吉原を歩く客
「こりゃ、美しい花魁だ。
 わしモジャモジャ頭汚らしい男だが、情けをかけてくれますかなあ」

 【解説】

 吉原にやってきた一行延高女郎安さ驚きますが、ケチな延高は、「そのがあったらほかに色々使えるな」と、せっかく吉原来たのに、女郎買うのをやめてしまいます。

 禿《かむろ》[女郎の世話をする幼女]下男を従えて闊歩《かっぽ》する花魁、客には「美しい」うっとりされますが、店の者は「けっ、お高くとまりやがって」と不愉快そうです(笑)

 今回の地図はこちら↓


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