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病人を殺せば、来世もまた畜生に生まれ変わりますよ ~『玉水物語』の17~

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玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。

【原文】

さしたる科[咎]《とが》も無きに殺したれバ、などか思ひ知らせざらん。
 我も此の娘を悩まし、命を取りて思ひをさせんと思う也」
 と語る。玉水、
「理《ことハり》なれど、衆生無着証《しゆじやうむじやくしやう》[?]化城品《けじやうほん》[※法華経の一節]と名付けたり。
 さりながら、業《ごう》に引かれて六道に迷う罪に拠(よ)りても、元の三途に帰る事、身より出せる炎也。
 我等畜類也。未だ業因《ごうゐん》盛ん也。
 然《しか》りと言へども、善根《ぜんこん》をもせバ、など今度人体を受けざるべき。
 又人体ハ佛の体《たい》也。
 心 違《たが》ハずバ、などか今度は仏にならざるべき。
 幾程《いくほど》あらぬ世中に一旦の念に引かれて、忽《たちま》ちに此の病者を失い給ハゞ、かの罪と言ゝまた多くの人の嘆きを受け給ひなん。
 何事も報いの物成れバ、さあらバ、猟師の手にも掛り給ふか、さらずバ、三途に帰り給ハん事の儚《はかな》さよ。
 たゞ然《しか》るべきハ、立ち退《の》きて助け給へ」

 と言へバ、古狐、目を見出して申す様《やう》、
「人界に生まるゝ物、佛の教えに拠りてなり。
 されバ、佛も度/\現じて、忽ちに人の命をも断ち給ふ。
 我に起こす罪《つミ》ならず、彼らが招く罪《ざい》成れバ、努々《ゆめ/\》身に過《あやま》ち無し。
 終日《ひめもす》に座禅工夫して我が心を見るに、心に種無し。理(り)を


予習の答え】

たゝしかるへき
ハ立のきてたすけ給へ

【さっくり現代語訳】

 この病人の父は、ワシの大事な子を、これと言った悪さをしたわけでもないのに、殺しやがったので、復讐してやるのじゃ!
 ワシもこの病気にして殺し、こいつのに思い知らせてやるのじゃ!」
 と言いました。玉水は、
「お怒りになるのはごもっともですが、仏の教えを思い出してくだされ。
 もし、この病人を殺してしまったら、死後にそのを裁かれ、また畜生《ちくしょう》[ケダモノ]に生まれることになってしまいますが、それは自業自得と言うものです。
 私たち畜生です。まだ、前世を償《つぐな》っている最中です。
[※仏教の教えでは、前世での行いによって、来世で何に生まれるか決まる]
 しかしながら、現世善《よ》い行いを重ねれば、今度は人の体に生まれ変わることができましょう。
 また、人の体仏の体でもあります。
 正しく生きれば、今度はにもなることができるのです[成仏できるのです]
 もう生い先も短いのに、一時の感情に任せて、ただちにこの病人殺してしまったら、人殺しだけでなく、病人が亡くなったことによる多くの人の悲しみや恨みを、伯父様は受け止めねばならぬのですよ。
 何事も犯したは返ってくるもので、伯父様はおそらく猟師に撃たれたりして酷《ひど》い死に方をするでしょう。
 それだけでなく、人殺しの罪によって、また畜生に生まれ変わることになるでしょうから、なんとまあ愚かなことでしょう。

 悪いことは言いませんから、すぐにここから立ち去って病人を助けなされるのが良いでしょう」
 と諫《いさ》めました。
 すると伯父は目をひんむいて、
人間の世界に生まれた者どもは、仏の教えが支配している。
 なので、もちょくちょく人間の世界にやってきて、悪さをした人間を奪ってしまわれる。
 今回の件も、ワシを犯しているわけではなく、奴ら自ら招いた罪による仏の罰なので、全くワシには非の打ち所がないというわけじゃ。
 一日中座禅をして、自分の心の中を見てみた所、心の種というものはなかった。
 真理というものを

【解説】

 現代語訳仏教用語はなるべく出さずにわかりやすくしましたが、一応、本文に出てくる「六道」「三途」説明をしておきますね。
 六道というのは、天道・人間道・修羅道畜生道・餓鬼道・地獄道のことで、業(ごう)[前世での行い]によって、死後、この六つの道のいずれかに生まれ変わります。
 その中で、三途というのは、畜生道・餓鬼道・地獄道のことで、悪行をしたものが生まれ変わる道になります。
 つまり玉水伯父は、前世で悪いことをしたから、キツネ[畜生]に生まれ変わったというわけです。
 どうも、このお話、百合系ではなく、仏教説話っぽくなってきましたね。
 玉水の言い分に従った方が良いと思うのですが、とりあえず、伯父の反論も聞きましょう。

次回の予習

伯父延喜の帝の話を出して反論するようです。

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三つ目コーナー

三つ目前世で何をして三つ目に生まれたんだろうね?

 

 

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