続きですヾ(๑╹◡╹)ノ"
【翻刻】【現代語表記】はあくまで参考のために載せているので、
どうぞすっとばして【現代語訳】からお読みくださってもノープロブレムですヾ(๑╹◡╹)ノ"
武家義理物語 6巻. [2] - 国立国会図書館デジタルコレクション
井原西鶴『武家義理物語』貞享五[一六八八]年刊
※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
【翻刻】
是ハ曲者《くせもの》なり。いかな
る存念《ぞんねん》あつて。かく御 吟味《ぎんみ》の御前《ごぜん》へ刃《は》物ハさし
給ふぞ。是非《せひ》いはせずしてハおかじ。身の難義《なんぎ》
にあひ給ハぬさきにと。いろ/\せめても。無念《むねん》とば
かりいひて。中/\申さるゝ氣色《けしき》ハなし。是に
ハやうす有べしと。此女のつぼねをさがして見し
に。ミたれ箱《はこ》にうち入て書置《かきをき》あり。次第をせん
さくすれば。月の夜雪の夜。ふたりの女臈にう
らミをふくミ。命《いのち》をとるべきおもひ立。さりとハを
そろしき女と沙汰《さた》極《きハま》りて。みせしめのため。御仕
置になりぬ。是我心からの悪事《あくじ》にて一命を
捨《すて》ける。其後 彼《かの》女の執心《しうしん》かよひて。人をなやませ
女中ハ難病《なんびやう》請《うけ》て。是を歎《なげ》きぬ。いづれの女臈《ちよろう》に
も額《ひたい》に。鹿《しか》の袋角《ふくろつの》のやうなる物 生出《をいいて》。美形《びけい》
おかしげに成て。外科《げくハ》本道も傳《つた》へ聞たるため
しもなく。此 療治《りやうぢ》にあぐミぬ。表向《おもてむき》の番組《ばんぐみ》の役《やく》
人ハのこらす。取ころされて。其後ハひさしく明屋《あきや》
敷《しき》にあそバされ置《をか》れしに。有時 仰出《あふせいた》されしハ。此
川屋敷のうちに。一夜《や》を明《あか》して。見てまいれと。世
にかくれなきぶへん者《もの》大平丹蔵《あふひたたんざう》といへる男と
まぎれもなきおくびやう者《もの》。栁田《やなだ》久六此二人
を同役《どうやく》に仰付《あふせつけ》られ。申合て一 夜《や》をつとめし
に。
【現代語表記】
「是は曲者《くせもの》也。
如何なる存念《ぞんねん》あって、斯《か》く御吟味《ごぎんみ》の御前《ごぜん》へ刃物《はもの》差し給うぞ。
是非《ぜひ》言わせずしては置かじ。
身の難儀《なんぎ》に遭《あ》い給わぬ先に。」
と、色々責めても、「無念《むねん》」とばかり言いて、中々申さるる気色《けしき》は無し。
「是には様子有るべし」と、此の女の局《つぼね》を探して見しに、乱れ箱《ばこ》に打ち入れて書置《かきお》き有り。
次第を詮索《せんさく》すれば、月の夜、雪の夜、二人の女臈《じょろう》に恨みを含み、命《いのち》を取るべき思い立ち、「然《さ》りとは恐ろしき女」と沙汰《さた》極《きわ》まりて、見せしめの為、御仕置きに成りぬ。
是、我が心からの悪事《あくじ》にて、一命を捨《す》てける。
其の後、彼《か》の女の執心《しゅうしん》通いて、人を悩ませ、女中は難病《なんびょう》請《う》けて、是を歎《なげ》きぬ。
何《いず》れの女臈《じょろう》にも、額《ひたい》に鹿《しか》の袋角《ふくろづの》の様《よう》なる物、生《お》い出《い》で、美形《びけい》可笑《おか》しげに成りて、外科《げか》、本道《ほんどう》も伝《つた》え聞きたる例《ためし》も無く、此の療治《りょうじ》に倦《あぐ》みぬ。
表向《おもてむ》きの番組《ばんぐみ》の役人《やくにん》は残らず取り殺されて、其の後は久しく明屋敷《あきやしき》に遊ばされ置《お》かれしに、有る時、仰《おお》せ出《い》だされしは、
「此の川屋敷の内に、一夜《いちや》を明《あ》かして見て参れ。」
と、世に隠れなき武辺者《ぶへんもの》大平丹蔵《おおひらたんぞう》と言える男と、紛れも無き臆病者《おくびょうもの》柳田久六《やなだきゅうろく》、此の二人を同役《どうやく》に仰《おお》せ付《つ》けられ、申し合わせて一夜を勤めしに、
【現代語訳】
「なんと怪しい奴じゃ!
どんな考えがあって、このような殿がお楽しみになっている席で、刃物を差しているのじゃ!
理由を言わなかったら、ただじゃおきませんぞ!
酷《ひど》い目にあわされる前に、早く白状なされ!」
と梅垣が色々と問い詰めても、松風は「無念じゃ。。。」とばかり言って、全く白状する気配がありません。
そこで、
「これには必ず事情があるはずじゃ」
と、松風の部屋を調べてみると、乱れ箱[フタのない箱]に書置きが入れてありました。
書置きの内容をよく読んでみると、月の夜と雪の夜の二人の女性に恨みを持って、命を取る決心が書かれていました。
「なんと恐ろしい女だ」と、殿から処分が下り、ほかの女中への見せしめのために処刑されました。
これは全て自分の心の中から出た悪い行いによって、命を捨てることになってしまったということです。
其の後、松風の怨念《おんねん》によって、人々は悩まされることになり、女中たちは難病にかかってしまって嘆くのでした。
その病気は、どの女中の額にも、鹿の袋角[生え変わったばかりの皮膚で覆《おお》われたコブ状のツノ]のようなものが生えて来て、美しい顔がヘンテコリンになってしまうというものでした。
外科でも内科でもこれまで伝え聞いた事がない症例で、この治療は困難を極めました。
表向きの部屋で警護する役人は全て憑《と》り殺されてしまい、その後、川屋敷は長い間、空き屋敷にされることになりました。
ある時、殿は、
「この川屋敷の中で、一晩過ごして様子を見て参れ。」
と、誰もが知る勇敢な武士の大平丹蔵《おおひらたんぞう》と、正真正銘《しょうしんしょうめい》の臆病者《おくびょうもの》の柳田久六《やなだきゅうろく》の二人に、コンビでこの役目を勤めるよう、仰せ付けました。
二人は打ち合わせをして、川屋敷で一晩過ごしました。
【解説】
さあ、お待ちかねの、ホラー展開になりましたヾ(๑╹◡╹)ノ"
書置きを残すということは、松風は、二人を殺して自分も死ぬつもりだったんですかね?
思いを果たさずに死んでしまった松風の怨念は深く、女中は全て変なツノが生え、役人は全て呪い殺されてしまい、川屋敷は空き家になってしまったという。
月の夜と雪の夜を呪い殺さなかったのは、美貌を失うのは、女中たちにとって、死ぬことよりもつらい事だったんでしょうねヾ(๑╹◡╹)ノ"
役人さんたちはただのとばっちりですねヾ(๑╹◡╹)ノ"
この状況を打開するために、信長は、勇敢者と臆病者のコンビを川屋敷に送り込むのですが、はてさてどうなるのやら?
次回が最終回ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
袋角(イメージ画像)ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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