うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

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③油盗老女の運命は?~井原西鶴「身を捨てて油壺」『西鶴諸国はなし』~

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※下に現代語訳と解説がちゃんとあります。

 

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井原西鶴西鶴諸国はなし』貞享二(1685)年刊
西鶴諸国はなし : 大下馬. 巻5 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。

【原文】

中にも弓《ゆみ》の上手《じやうず》有つて、雁股《かりまた》を引《ひ》つ銜《くハ》へ、狙ひ澄まして放ちければ、彼《か》の姥《うば》が細首《ほそくび》を落としけるに、そのまゝ火《ひ》を吹きだし、天に上がりぬ。
夜《よ》明けて能《よ》く/\見れバ、此の里の名立《なだち》姥也。
是を見て、一人も不憫《ふびん》と言ふ人無し。
其れよりも夜《よ》な/\出て、往《ゆ》き来の人の心玉《こゝろだま》を失ハしける。
必ず此の火《ひ》に肩を越されて、三年と生き延びし者《もの》ハ無し。
今、五里《ごり》三里の野《の》に出けるが、一里を飛び来る事、目振る間《ま》も無し。
近く寄る時に、「油差《あぶらさし》」と言ふと、忽《たちま》ちに消《き》える事、可笑《おか》し。

【現代語訳】

 そんな中にも弓の名人がいて、雁股《かりまた》をひっさげて、狙いすまして放ちヤマンバの細首射落としました。

 ヤマンバの首口から火を吹きだして、そのまま天に上って行きました。

 夜が明けてよくよく見てみると、ヤマンバではなく、この村悪名高い老女でした。

 これを見て気の毒に思う者一人もいませんでした。

 それからも毎晩のように老女の首が現れて、往来の人魂を失わせるのでした。

 この火を吹く老女の首追い越されて、三年以上生き延びた者いません

 今、老女の首は、枚岡村三里から五里範囲平地出没しますが、一里[約4キロ]を飛んでくる早さは、瞬きする間もありません。

 ただ、近くに寄ってきた時「油差《あぶらさし》」と言うと、すぐさま消えてしまうのは、面白い事です。

【挿絵】

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長刀《なぎなた》と刀を持った神主と、火を吹く老女の首

【解説】

 老女は、弓の名人の神主が射った雁股首を落とされますが、は死なずにを吹いて、一般的には姥が火と呼ばれる妖怪になってしまいました。
 雁股は、先が二股に別れた刃がついているです。

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 ちょっとかわいそうですが、十一人ものに追いやった女性ですから、気の毒だと思わないのも、致し方ないというか。

 妖怪となって人々苦しめるようになったのは、自分を虐《しいた》げた村人たちへの恨みでしょうねえ。
 人間長生きすると妖怪化するということでしょうか。

 老女の首追い越されたら三年以内に死ぬなんて恐ろしすぎますよねえ。
 それを回避する方法老女の首に向かって「油差」と言う事なのですが、なぜ「油差」と言うと老女の首が消えるのかが、このお話の研究ではずっとだとされています。

 でも、普通に考えたら、謎でも何でもないんですよ。
 油差は、油皿そそぐための容器です。

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 タイトルにもある油壺[油を入れておく壺]油差同様の容器で、盗んだ油はそのまま手では持てないので、油差とかに入れなければなりません。
 つまり、後ろめたい油盗みの事指摘されて、老女恥ずかしさのあまり消えてしまうのでしょう。
 ただそれだけの単純なオチですヾ(๑╹◡╹)ノ"

 盗み食いをしている三つ目「皿と箸はあるか?」って言ったら、気まずくて逃げ出したくなるのと同じで、油を盗んだ老女「油差はあるか?」とか言ったら、そりゃあバツが悪くて消えますよね。
 恐ろしい老女の、わずかに残った人間味を感じさせる、西鶴の演出でしょう。

 たとえは悪いけど、その通りだねヾ(๑╹◡╹)ノ"

 でも、これだけはハッキリさせて欲しいんだ、僕がするのは盗み食いじゃなくて、拾い食いだから! 

◆インフォメーション

現代語訳はありませんが、詳しい注が付いているので、古文を勉強されたい方には最適な一冊です。大学のテキストにも使用されています。
※北見花芽の中の人も少しだけ担当しています。

 

このお話の小説版も収録されています。
※北見花芽の中の人も別の話を担当しています。

 

北見花芽愛用のくずし字辞典です。

 

 

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