『赤本再興《あかほんさいこう》〇花咲き爺《じじ》』[式亭三馬補綴、歌川国丸画、文化九(一八一二)年刊]
※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
赤本花さき爺 - 国立国会図書館デジタルコレクション
花咲ぢゝ 3巻 鰻谷劇場条書 3巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
【原文】
①昔/\、片山里《かたやまざと》に、正直正兵衛《しやうぢきしやうべゑ》、お直《なほ》、と言ふ、夫婦の者、有りけり。
慈悲深《じひぶか》く、心素直《こゝろすなほ》なる故、此の二人を、正直爺《しやうぢきぢゞ》、正直婆《しやうぢきばゞ》、と名を呼びけるが、福と言ふ犬を飼ひ置きて、夫婦 寵愛《ちやうあい》し、福も良く馴染《なじ》ミ従ひける。
②今日ハ福めに、何ぞ旨い物を遣《や》らしやれ。
③福、来い/\、手を呉《く》れ/\。
④わん/\/\。
⑤其の隣に、慳助《けんすけ》と言ふ者有り。
妻を茨《いばら》と呼びけるが、夫婦の心、邪見無類《じやけんむるい》にて、常に悪事を巧《たく》ミけれバ、慳貪爺《けんどんぢゞ》、慳貪婆《けんどんばゞ》、と名付けて、人皆《ひとミな》憎ミけり。
⑥今日ハ猪の腿《もも》を吸い物にするぞ。
婆殿《ばゝあどの》、鯛の味噌酢に煮物有るよりハ、気が変ハつて良かろうぞや。
⑦鶏《にハとり》を絞め殺して、煮て食ハうと思ふたに、猪腿も良かろ/\。
【現代語訳】
①昔々、ど田舎の山村《さんそん》に、「正直正兵衛《しょうじきしょうべえ》」と「お直《なお》」という夫婦がいました。
情け深くて、心が真っ直ぐだったので、この二人を、「正直じじ」「正直ばば」と、人々は呼びました。
夫婦は、福と言う犬を飼っていて、大切にして愛し、福もよく懐《なつ》いて、言う事を聞きました。
②正直ばば「今日は福に、何か美味しい物を、食べさせてあげなされ」
③正直じじ「福、おいで、お手」
④福「わん、わん、わん」
⑤その隣に、慳助《けんすけ》と言う者がいました。
妻は茨《いばら》と言いましたが、この夫婦はとてつもなく悪い心を持ち、いつも悪事を企《たくら》んでいたので、人々はみんな、「慳貪《けんどん》じじ」「慳貪ばば」[「慳貪」は、ケチで強欲で、非道な様を言う]と名付けて、憎んでいました。
⑥慳貪じじ「今日はイノシシのモモを吸い物にするぞ。ばばあ殿、いつもの鯛の味噌酢と煮物なんかより、気分が変わって良かろう」
⑦慳貪ばば「ニワトリを絞め殺して煮て食べようと思っていたが、イノシシのモモも良いではないか」
【解説】
正直じいさんばあさん、隣のじいさんばあさん、ちゃんと名前があったのですね(笑)
隣のじいさんばあさんは、「慳貪」って言葉を使わなくなったので、今では「いじわるじいさん」「いじわるばあさん」になってますね。
犬の名前はポチじゃなくて福です。
右上の「風月」という屏風は、ちらりと見える署名から推測すると、佐々木文山[江戸時代の書家]の筆でしょうか???
僕、三つ目って呼ばれてるけど、本当はちゃんとした名前があるんだよね?ヾ(๑╹◡╹)ノ"
確か、毛無禿丸《けなしはげまる》か毛根絶蔵《もうこんたえぞう》だった思うヾ(๑╹◡╹)ノ"
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