『赤本再興《あかほんさいこう》〇花咲き爺《じじ》』[式亭三馬補綴、歌川国丸画、文化九(一八一二)年刊]
※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
赤本花さき爺 - 国立国会図書館デジタルコレクション
花咲ぢゝ 3巻 鰻谷劇場条書 3巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
【原文】
①斯くて正直爺夫婦の者ハ、心正しく慈悲深き由、國中に聞こえけれバ、殿様、奇特《きどく》に思し召しめされ、金一万五千両、米十二万三千四百五十俵、御褒美として下し置かれしかバ、面目を施しける。
②「何一つ手柄も無い私《わたくし》へ、数多《あまた》の御褒美頂戴致し、冥加至極《ミやうがしごく》有難う存じ奉りまする」
③「奇特なる御褒美として、殿様より下し置かる。有り難く頂戴致せ」
④「俺もせめて一箱欲しい。此の本の作者も欲しからう」
⑤花咲き爺《ぢゞ》 三冊
赤本の文法に倣《なら》ひて
式亭三馬 補綴《ほてつ》
赤本の筆意を抜き写しにして
歌川國丸 画
赤本の絶えたるを再び興《おこ》さんと再板する者は
田所町 鶴屋金助
文化九 壬申年《みずのえさるどし》 正月再板
⑥京都 田中宗悦《たなかそうえつ》製
仙方延壽丹《せんぱうえんじゆたん》
逆上《のぼ》せ引き下げ、痰咳《たんせき》に即効。弱き人の補い薬。持薬に用ひ給ふべし。
元禄年中より百二十余年来、賣り払ひ来たる、下り[「下飴」の略か]練り薬の元祖なり。
賣り払い所
江戸本町二丁目
式亭三馬店
百文より 二匁三匁四匁
銀二朱
金百疋
一割代[一括代?]弐拾匁也
諸虚百損《しよきよひやくそん》を補ふの良薬なり。
【現代語訳】
①こうして、正直夫婦は心正しく慈悲深いということが、国中に広まったので、殿様は素晴らしいとお思いになり、金一万五千両、米十二万三千四百五十俵をご褒美としてお与えになり、評判となりました。
②正直じじ「大したことは何ひとつしていない私へ、たくさんのご褒美をいただき、非常にありがたく存じます」
③家来「素晴らしい行いをしたご褒美として、殿様がお与えになる。ありがたく頂戴いたせ」
④奴《やっこ》「俺もせめて一箱ぐらいは欲しい。この本の作者も欲しいだろうな」
⑤『花咲き爺《じじ》』三冊
赤本の文体を模倣《もほう》して、式亭三馬がリメイクしました。
赤本の画風を模倣して、歌川国丸が描きました。
赤本の作品が絶えてしまったので、復活させようとするのは、田所町の鶴屋金助です。
文化九 壬申年《みずのえさるどし》 正月再版
⑥京都 田中宗悦《たなかそうえつ》製「仙方延寿丹《せんぽうえんじゅたん》」
頭に上った血を引き下げ、痰《たん》や咳《せき》にすぐ効きます。
体が弱い人を助ける薬です。
常備薬としてお使いください。
元禄年中より百二十年あまりもの間、売り続けられている、練り薬の元祖です。
販売所は江戸本町二丁目の式亭三馬の店です。
商品の料金のラインナップは、百文[一両十万円で計算すると、二千五百円]から、二匁《にもんめ》[約三千三百円]、三匁[約五千円]、四匁[[約六千七百円]。銀二朱[約一万二千百円]。金百疋《きんひゃっぴき》[約二万五千円]。まとめてのご購入は二十匁[約三万三千三百円]です。
様々な体の不調に効果がある良薬です。
【解説】
こんなにご褒美を与えるとは、ここはどんだけ裕福な藩なのでしょうか。
殿様は、前に出てきた参勤交代の途中かと思われる二人の殿様とは違う、正直夫婦が住んでいる国の大名でしょうね。
確かに、正直じじは、大したことはしてません、ただただ慳貪じじに酷い目にあっただけです。
上部には、この作品の作者や版元の説明と、これまた、式亭三馬お店の宣伝が書かれています。
どうやら万能薬のようですねヾ(๑╹◡╹)ノ"
料金システムはよくわからないのですが、ちなみに
1両=4歩=16朱=60匁=400疋=4000文
というのが、この時代の基本的な換算レートです。
次回、ついに最終回です。
僕もご褒美が欲しいよヾ(๑╹◡╹)ノ"
じゃあ、ご褒美をあげるから、そこで四つん這いになってヾ(๑╹◡╹)ノ"
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