日本永代蔵 6巻 [1] - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。
【原文】
跪《けつまづ》く所で燧石《ひうちいし》を拾いて、袂《たもと》に入れける。
朝夕《てうセき》の煙《けむり》を立つる世帯持《せたいもち》ハ、万《よろづ》斯様《かやう》に気を付けずしては、有るべからず。
此の男、生《む》まれ付きて恡《しハ》きに非《あら》ず。
万事の取り回し、人の鑑《かゞミ》にもなりぬべき願ひ、斯程《かほど》の身袋《しんだい》まで、年取る宿に餅搗《もちつ》かず、
「閙敷《いそがハしき》時の人遣《ひとづか》ひ、諸道具《しよだうぐ》の取り置《を》きも喧《やかま》しき」
とて、是も利勘《りかん》にて、大佛の前《まへ》へ誂《あつら》へ、壱貫目に付き何程と極《きハ》めける。
十二月廿八日の曙《あけぼの》、急ぎて荷《にな》ひ連れ、藤屋見世《ふじやみセ》に並べ、
「請け取り給へ」
と言ふ。
餅搗《もちつ》きたての好《この》もしく、春めきて見えける。
旦那《だんな》ハ聞かぬ皃《かほ》して、十露盤《そろばん》置《を》きしに、餅屋《もちや》ハ時分柄《じぶんがら》に暇を惜《を》しミ、幾度《いくたび》か断《ことハ》りて、才覚《さいかく》らしき若《わか》ひ者《もの》、杜斤《ちぎ》の目りんと請け取りて帰しぬ。
一時《いつとき》ばかり過ぎて、
「今の餅《もち》、請《う》け取《と》つたか」
と言へバ、
【現代語訳】
つまずいた所でも、ただでは起きず、火打石を拾って、袂《たもと》に入れました。
朝晩、炊事《すいじ》のために竈《かまど》に火を入れ、日々の生活を送り、家族を養う者は、この藤市のように、すべての事に気を付けて、倹約しなければなりません。
この藤市という男は、生まれつきケチな人ではありませんでした。
すべての立ち振る舞いで、人の手本になりたいと願って、倹約家になったのです。
藤市は、これほどの金持ちになっても、新年を迎えるにあたって、家で餅つきをしませんでした。
「年末の忙しい時期に人手を取られるし、臼や杵など必要な道具を用意するのもわずらわしい」
と、家で餅をつくのは不経済と判断し、方広寺の大仏前の餅屋に、一貫目[3.75キログラム]につきいくらと値段を決めて、注文しました。
十二月二十八日の早朝、餅屋は急いで餅を連れ立って担いで来て、藤屋の店先に並べ、
「受け取ってくださいませ」
と言いました。
餅はつきたてが好まれて、いかにも新春っぽく感じるものです。
しかし、旦那の藤市は聞こえぬふりをして、ソロバンを置いてはじいていました。
餅屋は、忙しい時期なので、時間を惜しみ、何度も声を掛けました。
すると、気の利いた店の若い者が応対し、秤《はかり》で少しの狂いもなく計って料金を払い、餅を受け取って餅屋を返しました。
二時間ほどたってから、藤市は若い者に
「今の餅は受け取ってしまったのか」
と聞きました。
【解説】
藤市のドケチ、いや、倹約っぷりを、作者の西鶴は、一見、称賛しているようですが、実は皮肉をこめて書いてるんですよねえ。
ほめ殺しってやつですかね(笑)
さて、餅屋が気を利かせて持ってきたつきたてのお餅を、藤市は受け取ろうとしなかったのはなぜなのでしょうか?
次回にその理由が判明します。
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