『木曽街道続膝栗毛三編下巻』(十返舎一九作、文化九[一八一二]年刊)
続膝栗毛 3編 木曽街道膝栗毛 下 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。
【原文】
男「爰《こゝ》は相《あい》の宿《しゆく》じや。
良《ゑ》い宿じやてて、高《たけ》が知れて有りよる。
此方《こち》の家《うち》へ泊まらんせ」
北八「何だか今日ハ強勢《ごうせへ》に草臥《くたび》れた。
弥次さん、何処《どこ》でも良《い》ゝ、高《たか》ゞ一夜《いちや》の事だから、早く泊まつて休《やす》まふじやァねへか」
弥次「そんなら、モシ、御前《おめへ》の所ハ」
男「マア、此方《こち》来さんせ」
ト、連れて行《ゆ》くハ、宿外《しゆくはず》れの如何《いか》にもむさくるしき小家にて、六阝巡礼《ろくぶじゆんれい》などの木賃宿《きちんやど》也。
女房「お泊りかい」
亭主「サア/\、上がらんせ/\」
弥次「此奴《こいつ》ハ大變な家《うち》だ。
せめて髱《たぼ》(女)でも良《い》ゝのが有れバ良《い》ゝが」
ト、見遣る女房ハ、髪の毛に油気絶へて、顔も体も節榑立《ふしくれだ》ち、薄汚《うそよご》れた形《なり》に、乳飲み子を肌に付けて、囲炉裏《いろり》の火を炊きながら、鼻水を垂らして居る。
北八「コリヤ、収まらねへハ」
亭主「モシ、入れ飯(雑炊《ゾウスイ》)など焚《た》こかい。
但《たゞ》し、御前方《おまいがた》貰ひ溜《た》めた米が有るなら、飯、焚《た》かせなされ」
弥次「ナニ、貰《もら》つた米が有るものか。
俺等《おいら》を乞食《こじき》だと思ふそうだ」
亭主「ハテ、陪堂《ほゐたう》(乞食《コツジキ》)じやないかい。
是ハしたり。
そしたら、旅籠《はたご》で泊まらんすか」
弥次「知れた事さ。
江戸つ子だものを」
亭主「そふかい。
しかし、何も上げる物が無い。
コリヤ、御方《おかた》、どうまん(カジキ)の焼《や》き干《ぼ》しが有るじやろ。
琉球芋《りうきういも》など入れて焚《た》かんせ」
【現代語訳】
男「ここは間の宿じゃ。
良い宿を探したところで、大した宿は無いぞ。
それなら、ワシの家に泊まりなされ」
北八「なんだか、今日はすごく疲れた。
弥次さん、どこでもいい、たかが一晩のことだから、早く泊まって休もうじゃねえか」
弥次「そんなら、もし、お前さんの所へ泊まろう」
男「まあ、こっちに来なされ」
と、男が連れて行ったのは、間の宿の外れの、いかにもむさ苦しい小さな家で、六部巡礼[六十六箇所の霊場に法華経を収めるという名目で、米などを物乞いしながら歩いた者]などが泊まる木賃宿《きちんやど》[食料などは自分で用意して、素泊まりするような、粗末な安宿]でした。
女房「お泊りですかい」
宿屋の亭主(=男)「さあ、さあ、おあがりなさい、おあがりなさい」
弥次「こいつは、とんでもない家だ。
せめて良い女でもいればいいのだが」
と、女房に目を向けると、髪の毛は油っ気が無く、顔も体も痩せて骨がゴツゴツしていて、薄汚れた姿で、乳児を肌に抱き、囲炉裏の火を燃やしながら、鼻水を垂らしていました。
北八「これはありえないわ」
亭主「もし、雑炊など炊こうか。
ただし、お前さん方が貰ってためた米があったら、それで雑炊を炊かせてくだされ」
弥次「なに? 貰った米なんかあるもんか。
俺たちを乞食だと思ってるようだな」
亭主「はて、乞食じゃないのかい?
これはやらかした。
そしたら、旅籠《はたご》[食事つきの一般的な宿泊]でお泊りになるのか」
弥次「当り前よ。
こちとら江戸っ子だもの」
亭主「そうかい、しかし、なにも食べさせるものが無い。
こりゃ、女房や、カジキの干物があるじゃろ。
琉球芋《りゅうきゅういも》[サツマイモまたはジャガイモ]などを入れて炊いとくれ」
【解説】
道で出会った男は宿屋の亭主で、連れられたのは物乞いなどが泊まるような粗末な安宿でした。
どうやら、弥次さんと喜多さんは物乞いと間違えられたようです。
良い宿に泊まってゆっくりするつもりが、とんでもない宿に泊まることになってしまった弥次喜多の二人、はてさて。
次回に続く!
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