今回でやっと奉公先に到着するよ!
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 好色一代女. 巻4
18ページ目です。
【原文】
して、
「そんな年寄(としより)男は、此方(こち)のあしらひ一つなり。
縁(ゑん)あつて手を重ねば、透間(すきま)を見て、脇(わき)に男を拵(こしら)へ、腹(はら)が難しう成りなば、其の親仁(おやじ)様の子に被(かづ)けて、御隠居(ごゐんきよ)の跡(あと)を、我が物に書置(かきおき)させまして、末/゛\世渡り」
と、分別落ち着けて行程(ゆくほど)に、
「さあ爰(ここ)じや、入り給へ」
と、姥(うば)先(さき)に立ちて入りける。
中戸(なかど)[店と台所の間にある扉]に草履(ざうり)脱ぎて、広敷(ひろしき)[「台所から入った所にある部屋」に回りて腰掛(こしかけ)けるに、年は七十計(ばかり)にて、成程堅固(けんご)に見えし上様(かみさま)出させ給ひ、我が姿(すがた)を穴(あな)の開く程見させ給ひ、
「どこも尋常(じんじやう)にて嬉(うれ)し。」
と仰(おほせ)ける。
「是は思ふたと格別(かくべつ)の違(ちが)ひ。
上様(かみさま)への奉公(ほうこう)ならば来まいもの」
と悔(くや)し。
されども情(なさけ)らしき御言葉(おことば)に、
「半季(はんき)の立つは今の事。
此の浦(うら)の塩(しほ)をも踏(ふん)だが良い[「苦労する」という意味の慣用句]」
と爰(こゝ)に心を
【ざっくり現代語訳】
私は姥の話を一通り聞いて家の内情を理解しました。
「そんな年寄り男は、私のテクニック次第でどうとでもなりましょう。
上手く行って長くお勤めすることになったら、スキを見て別の若い男を作り、出来ちゃったら、そのご隠居様の子ということにしてしまえばよろしい♪
そして、財産は全て私に相続すると言う遺言書を書かせて、あとはもう悠々自適の生活を送ることにしましょう♪」[一代女の心の声]
と、様々に思案を巡らせながら歩いて行くと、どうやらお家に着いたようで、
「さあ、ここじゃ、お入りなさい」
と姥の先導で中に入りました。
中戸で草履を脱ぎ、ピロシキを食べて、広敷[ひろしき]に回って座っていると、年は七十ぐらいの、いかにも元気そうな女のご隠居様がお出ましになりました。
穴が開くほどじっくり私の姿を見て、
「どこを見ても非の打ち所がない女性で、嬉しゅうございますぞ」
とおっしゃいました。
「思てたんと違う!!!
女のご隠居様への奉公なら来なかったものを!」[一代女の心の声]
と、私はちゃんと確認しなかったことを後悔しましたが、ご隠居様の優しい言葉に思い直し、
「半年の契約期間が過ぎるのはあっという間のこと。
堺の地で苦労してみるのも良いでしょう」[一代女の心の声]
と、ここで奉公することに心を
【解説】
はい、すでに目録[目次]部分でネタバレしていましたが、ご隠居様は男ではなく女だったのです。
でも、わかってても面白いのは、やはり西鶴の筆力でしょうね♪
「寝室近くで布団を出したりしまったりするだけの仕事」というのは、普通に考えたら「夜のお相手をする仕事」ということで、奉公先が男だと一代女が思い込んだのは当然のことでしょう。
悪いことも考えていた一代女ですが、やっぱり大した女性で、すぐに思い直してこの家で奉公することに決めるものの、そんなこんなで、次回でこのお話は終わってしまうのです!
[追記:道中で、姥はちゃんと女のご隠居のことのつもりで「内方」と言ったのに、一代女が勝手に男のご隠居と勘違いしたということかもしれませんね。]
僕の仕事は人を驚かすことだよ!ももんじい!
前回のくずし字クイズの答え
今回のくずし字クイズ
次回のページからの出題です♪
これはひらがな[変体仮名]ですね♪
何回か出てきたのもあれば、初めてのもありますね♪
これは漢字です♪
◆北見花芽のほしい物リストです♪ ご支援よろしくお願いします♪
◆オススメ書籍
西鶴作品が現代語訳付きでわかりやすく読めます♪
◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪
◆はてなIDをお持ちでない方も、拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪
◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします。憧れのホットエントリー(笑)