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[12]さあこれからという時に ~『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」~

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 お七の両親は、姪の出産を知らせを聞いて、あわてて出掛けます。
 留守番のお七が里の子の様子を見に行くと、里の子の正体は吉三郎と判明したのでした。


 

 

 

 


好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]
好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション



【原文】【現代語訳】

 吉三郎も面《おもて》見合はせ、物ゑ言ハざる事 暫《しばら》く有りて、
「我、斯《か》く姿を変へて、せめてハ君《きミ》を仮初《かりそめ》に見る事願ひ、宵《よひ》の憂《う》き思ひ、思し召しやられよ」
 と、始めよりの事共を、都度《つど》/゛\に語りけれバ、
 吉三郎もお七と顔を見合わせ、しばらく何も言えませんでしたが、
「私がこのように姿を変えたのは、せめて君(お七)の姿を少しだけでも見たいと願ったからです。
 夜の間、辛《つら》い思いをしたことを、どうぞお察しください」
 と、事の始めから、くどくどと話し始めました。


「菟角《とかく》ハ是へ御入り有りて、其の御恨ミも聞き参らせん」
 と、手を引き参らすれども、
「ともかく、こちらにお入りになってから、そのお恨みの言葉をお聞きしましょう」
 と、お七は吉三郎の手を引きました。


 宵よりの身の痛ミ、是非《ぜひ》も無く哀《あハ》れなり。
 しかし、吉三郎は、夜の間ずっと土間で耐えていたので、体中が痛くて動くことができず、それはそれはかわいそうでした。

 漸《やう/\》下女と手を組ミて、車《くるま》に掻《か》き乗せて、常《つね》の寐間《ねま》に入れ参らせて、
 なんとかお七は、下女と手車を組んで吉三郎を乗せ、自分の寝室にお連れしました。

 手の続く程は摩《さす》りて、幾薬《いくくすり》を与へ、少し笑《わら》ひ皃《かほ》嬉しく、
 お七は、手の続く限界まで吉三郎の体をさすって温め、いろんな薬を与えると、吉三郎は少し笑顔を見せたので、お七は嬉しく思いました。

「盃事《さかづきごと》して、今宵《こよひ》ハ心に有《あ》る程《ほど》を語り尽くしなん」
「盃を交わして、今夜は思う存分、語り尽くしましょう」

 と喜ぶ所へ、親父《おやぢ》帰らせ給ふにぞ、重ねて憂《う》き目に遭《あ》ひぬ。
 と喜んでいる所に、親父(お七の父親)がお帰りになったので、吉三郎はまたもや辛い思いをすることになったのでした。

 衣桁《いかう》の陰《かげ》に隠して、然《さ》らぬ有様にて、
「愈《いよ》/\お初《はつ》様ハ、親子共 御忠実《おまめ》か」
 と言へば、
 お七は吉三郎をハンガーラックの陰に隠し、なにくわぬ顔をして、
「お初《はつ》様(姪の名)は、親子ともに、しっかりご無事でしょうか」
 と聞くと、


 親父《おやぢ》喜びて、
「一人の姪《めい》なれバ、兎《と》や角《かく》氣遣《きづか》いせしに、重荷《おもに》降ろした」
 と機嫌《きげん》良く、産着《うぶぎ》の模様 詮索《せんさく》、
親父は喜んで、
「たった一人の姪なので、なにかと心配したが、肩の重荷がやっと降りた」
 と、言ってゴキゲンで、産着《うぶぎ》の模様を選び始めました。


「萬祝《よろづいわ》いて、靏龜松竹の摺箔《すりはく》ハ」
 と申されけるに、
めでたい尽くしで、鶴亀松竹の摺箔《すりはく》[布に金箔や銀箔で模様を付けたもの]はどうだろうか」
 と、おっしゃるので、


「遅からぬ御事、明日《あす》御心 静《しづ》かに」
 と、下女《げぢよ》も口/゛\に申せば、
「お急ぎになる事ではないので、明日、ゆっくり、じっくり、しっかり、お考えになっては」
 と、お七と下女は口々に申し上げたのですが、


「否《いや》/\斯様《かやう》の事ハ、早きこそ良けれ」
 と、木枕《きまくら》、鼻紙《はながミ》を畳ミ掛けて、雛形《ひながた》切るゝこそ、うたてけれ。
 親父は、
「いやいや、こういうことは、早い方が良い」
 と、木枕を台にし、鼻紙をたたんで、型紙を切り始めたので、お七は「うざっ」と思ったのでした。

[参考・鶴亀松竹の摺箔]

bunka.nii.ac.jp


 漸《やう/\》其《そ》の程 過《す》ぎて、色〻誑《たら》して寝せまして、
 ようやく、親父の気が済んでから、色々と言いくるめて、親父を寝かせることができました。

 語《かた》りたき事ながら、襖障子《ふすましゃうじ》一重《ひとへ》なれバ、漏れ行《ゆ》く事を恐ろしく、灯《ともしび》の影《かげ》に硯《すゞり》、帋《かミ》置《を》きて、心の程を互《たが》ひに書きて、見せたり見たり、
 お七と吉三郎は語り明かしたいものの、親の寝室とは襖《ふすま》一枚なので、声が漏れ聞こえるのが恐ろしく、灯火の火影《ほかげ》に硯と紙を置いて、思いの限りをお互いに書き、見せたり、見たりしました。

 是《これ》を思へば、鴛《をし》の襖《ふすま》とや言ふべし。
 これぞ、「鴛《おし》の襖《ふすま》」[仲の良い「鴛《おしどり》」と、言葉がしゃべれない「唖《おし》」を掛けた]とでも言うべきでしょう。
※現代では不適切とされる表現がありますが、あくまでも江戸時代の文学作品に書かれている内容をそのまま紹介するのが目的であって、差別を助長する意図がない事をご了承ください。


 夜《よ》もすがら書《か》き口説《くど》きて、明《あ》け方の別《わか》れ、又も無き恋が余りて、然《さ》りとては物憂き世や」
 一晩中、筆談を続け、明け方に分かれましたが、これ以上ないチャンスだったのに、恋の思いを満足に遂げることができませんでした。
 まったくもって、物憂《ものう》き浮世《うきよ》(辛い世の中)でありますなあ。



 【解説】

 お七はヨレヨレの吉三郎を寝室に連れ込んで介抱し、「さあヤルぞっ」となった時、お七の父親が帰ってきてしまいます。

 母親は色々と手伝うこともあるでしょうが、父親は特に手伝えることもないので、さっさと帰ってきたのでしょうね。

 しかも、親父は産着の模様を考え出して中々寝てくれません。

 やっと親父を寝かせても、襖一枚なので、声が出るような行為はできず、筆談のみで一晩過ごして、朝になると吉三郎は泣く泣く帰っていったのでした。

 この次のページに挿絵があります。


 【挿絵】



 右図は、吉祥寺から家に帰る、お七一行の姿が描かれています。
 左から、お七の母親、お七、下女、下男です。
 背景に墓が描かれているのは、その後のお七の運命を暗示しているのでしょうか。

 左図は、お七の家である、八百屋の店先です。
 左手に売りに来た野菜を持ち、笠をかぶり、蓑を着た、里の子(吉三郎)の姿が描かれています。
 右の男性は、お七の父親にしては貫禄が無いので、八百屋の従業員か、買い物客でしょうか。

 なんか、この章、挿絵の順番が変なんですよね。
 単なるミスで特に意味はないと思うのですが。。。



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