『化物昼寝鼾』の続きだよ!
狐さんはついに良いターゲットを見つけたみたいなんだけど。。。
『化物昼寝鼾(ばけものひるねのいびき)』(市場通笑作、鳥居清長画、天明四[1784]年刊)
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 化物昼寝鼾 2巻
※早稲田大学図書館所蔵の本の方が状態が良いです。
[怪物昼寝鼾]. 上,下 / 通笑 作 ; 清長 画
【原文】
狐ハ大振り袖の所作事《しよさごと》でも一杯喰らふ者が無し。
手前の堀辺うろ/\とぶらつき、狐に化かされた様《やう》になり、厳《いか》い戯《たわ》けな者、近年ハ江戸へ初めて来た者も御強《おこハ》に掛けられるものハ無し。
化かそうと言ふハ、きつい了見《りやうけん》違ひ。
仲間の狐、迎いに来たり、連れ立つて帰らんと、話しながら帰れば、芝原《しバわら》に二・三人、豊島屋《としまや》の三舛樽《みますだる》を真ん中に置き、引つこ抜いても気遣いない脇差《わきざし》を差して、良い機嫌にて楽しミいれバ、
「せめてこれでも今日の仕事にせん」
と思ひ、
「もし、出会いをいたしやしやう」
と言へバ、
「下地《したじ》は好きなり御意《ぎよい》ハ好《よ》し[好都合なことのたとえ]、夢か現《うつゝ》か」
と喜び、
差《さ》へつ押さえつ、余念《よねん》なく楽しめば、
「してやつたり」
と女の供、
「小豆餅《あづきもち》を上がりませ」
と差し出せば、中に素早き折助《おりすけ》と言ふ者、
「こういふ所で小豆餅とハ合点《がてん》が行《ゆ》かぬ奴等《やつら》」
と、二人とも引っ縛る。
【ざっくり現代語訳】
とまあ、狐が化けた大振り袖の女性に、騙される者はいませんでした。
狐は手前にある堀のほとりを、まるで狐に化かされたかのように呆然として、うろうろと歩くのでした。
そもそも、どんなバカ者でも、江戸に初めてやってきた者でも、最近では行きずりの女には引っかかりません。
つまり、女になって化かそうとしたのが、そもそもの間違いだったのです。
そんなこんなで、仲間の狐が迎えに来たので、話しながら一緒に帰ろうとしていると、芝原《しばわら》[芝の生えた野原]で、ヘナチョコな脇差《わきざし》を差した三人の折助《おりすけ》[武家の使用人、下男]らしき男たちが、豊島屋《としまや》[酒屋の名、現在でも営業中]の三升樽《みますだる》を囲み、上機嫌で酒宴を楽しんでいるのが見えました。
女に化けた狐は、
「せめてこいつらでも化かさねば気が済まぬ!」
と思い、
「私がお相手をいたしましょう♪」
と近づきました。
宴会中で気分が良い折助たちは、
「これはまるで夢のようにナイスなタイミング♪」
と喜び、女に化けた狐とお酒を酌み交わして、何の疑いもなく楽しむのでした。
仲間の狐は、
「しめた!」
と思い、
「小豆餅《あずきもち》でもお召し上がりなされ」
と小豆餅を差し出しました。
しかし、この中に目ざとい折助がいて、
「こんな何もない所で小豆餅が出てくるわけがない![「こんな酒の席で甘い小豆餅を出すのはおかしい!」か?]
怪しいやつらだ!」
と、二匹の狐を縛り上げたのでした。
【解説】
ここでの折助のように、庶民が差して良いのは脇差と言う短い刀のみです。
武士は脇差に加えて長い刀も差すことが許されているので二本差しです。
小豆餅はあんころ餅のことですが、狐さんが出したということは、あんころ餅ならぬ、うんころ餅だったのでしょうね(笑)
【原文】
振り袖にて桜の木へ縛られ、『信仰記《しんかうき》』の四段目、雪姫が足にて鼠を描いて縄を解きしを思ひ出だし、鼠を描いて縄よりも腹が減つた故、所《しよ》しめるつもり。
「この鼠は何故出ぬぞ。
駒太夫が浄瑠璃ハ無いが、せめてめりやすで愁嘆《しうたん》がしたい。」
【ざっくり現代語訳】
振り袖姿で桜の木に縛られた狐は、『祇園祭礼信仰記』の四段目で、同じように振り袖姿で桜の木に縛られた雪姫が、足で桜の花びらを集めてネズミを描き、そのネズミが動き出して雪姫を縛っている縄を食いちぎったことを思い出しました。
狐もネズミを描いて、縄を解くのはさておき、腹が減ったから、ネズミが動き出したら食べようと思いました。
しかし、ネズミが動き出すはずもなく、狐は、
「このネズミは何で動き出さないんじゃ?
豊竹駒太夫の浄瑠璃とまでは言わないが、せめてめりやす[歌舞伎の伴奏音楽]でこの愁嘆場[悲劇的な場面]を演じたいものじゃ」
と嘆くのでした。
【解説】
『祇園祭礼信仰記』は当時ヒットしたお芝居です。
雪姫は画家の雪舟の孫という設定で、雪舟が涙で描いたネズミが動き出したという故事をふまえています。
豊竹駒太夫も当時人気があった浄瑠璃の語り手です。
【原文】
「俺ハ下戸《げこ》故《ゆへ》、一ツ食つた。
誰ぞ解毒《げどく》は持たぬか。
ゲロ/\が出そうだ。」
【ざっくり現代語訳】
[折助1のセリフ]
「うわあ、俺は酒が飲めないから、一つ食べてもうた!
誰か解毒薬を持ってませぬか!
もうゲロが出そうだ!」
【解説】
この折助は、下戸だけど、宴会の席では浮かれて化かされてしまったのですね(笑)
「ゲロゲロ」って言葉がすでにこの時代に使われていたことが驚きです!
【原文】
「今時、蕎麦切りや小豆餅でいいものか。」
【ざっくり現代語訳】
[折助2のセリフ]
「こんな所ですぐに蕎麦や小豆餅が出てくるわけないやん!」[「酒の席で蕎麦や小豆餅を出すのはおかしいだろ!」か?]
【解説】
小豆餅が狐のう○こ[馬糞か?]なら、お蕎麦の出汁は、狐のおし○こでしょうか?(笑)
【原文】
「さあどうだ、畜生《ちくしやう》め。」
【ざっくり現代語訳】
[折助3のセリフ]
「さあ、どうだ、まいったか、化け物め!」
【解説】
前回のくずし字クイズの答えはここです♪
狐は化けれても腕力はないようで、人間に簡単に組み伏せられてしまうみたいですね。。。
次回予告とくずし字クイズ
何やら狸さんが驚いていますが、店先に描かれている文字にその理由が隠されていそうです。
言い忘れてましたけど、『化物昼寝鼾』は上下二巻で、次回で上巻が終わりです♪
僕は三つ目ビームの出し方忘れちゃった。。。
ビックリするから思い出さなくていいよ。。。
◆北見花芽のほしい物リストです♪ ご支援よろしくお願いします♪
◆オススメ書籍
西鶴作品が現代語でわかりやすく読めます♪ 私もちょっとだけ書いてます♪
◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪
◆はてなIDをお持ちでない方も、拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪
◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします。憧れのホットエントリー(笑)