昭和3[1928]年2月と4月に『江戸往来』2巻2号と3号に掲載された、松川碧泉氏の「江戸の七不思議」という記事に、「本所七不思議」について詳しく書かれていました。
ここでは、15種類もの本所七不思議について触れらています。
全文掲載するわけにはいかないので、その内容を簡潔にまとめて、私の見解を述べていきたいと思います。
紹介されている本所七不思議の内容は出典が明記されているものもありますが、それ以外は松川碧泉氏が聞き書きした内容が多く含まれていると思われています。
これまた、わざわざコピーを取り寄せてちゃんと読みましたのよ!
一、片葉の芦[蘆]
場所:駒止の小溝[『江戸砂子』]
内容:相愛の相手に見捨てられたり、片恋に悩んで身を投げた男や女の怨念が、片葉の芦となって生える。
備考:片葉の芦は、他所の七不思議などにも例がある。
何で三つ目がまとめてるんだよ。。。
まあ、いいや。。。
浮世絵では、残酷な殺人事件が原因でしたが、ここでは身投げした人の怨念ということになっています。kihiminhamame.hatenablog.com
場所に関しては、『江戸砂子』が引用されています。
該当の箇所を見てみましょう。
菊岡沾涼ほか『江戸砂子温故名蹟誌』明和9 [1772]年刊
江戸砂子温故名蹟誌 6巻. [8] - 国立国会図書館デジタルコレクション
※ この記事では国会図書館デジタルコレクションの画像を適時改変して使用しています。
【原文】
○駒止(こまどめ)橋
両国橋の東詰、藤堂和泉守殿蔵屋敷へ行く所の小橋也。入堀(いりほり)の橋と云ふ。
○片葉の芦
駒止の小橋の芦也。風の吹き回し故か、此の所ハ芦、片葉也と云ふ。
よつて小溝も片葉堀と私(わたくし)に云ふ。
【さっくり現代語訳】
○駒止[駒留](こまどめ)橋
両国橋の東端、藤堂和泉守(とうどういずみのかみ)殿の蔵屋敷へ行く所に架かっている小橋です。入堀(いりほり)[屋敷内に水を引き入れるための人工の堀]の橋ということです。
○片葉の芦
駒止[駒留]の小橋に生えている芦のことです、
ここに吹き込む風の方向のためか、ここの芦は片側にしか葉が生えていません。
なので、橋の架かっている小溝も片葉堀と地元では言われています。
地図ドン!
〔江戸切絵図〕. 本所絵図 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※ この記事では国会図書館デジタルコレクションの画像を適時改変して使用しています。
意外や、この江戸時代の資料では、片葉の芦は怪異とかではなく、冷静に風の吹き回しが原因かと言ってています。
それが、いつのまにか、おそらく片葉が片思いを連想させて、恋に悩んで身投げした人の怨念ということになって行ったのでしょうね。
浮世絵の作者は、片葉の芦と、片手片足[芦]と掛けて話を創作したのでしょうか。
二、置いてけ堀
場所:お竹蔵の堀、割下水の内
内容:魚や揚物を持って堀の側を通ると「おいてけ、おいてけ」の声、一匹でも置いていけば難を逃れ、置いて行かないと家に帰るまでに全部無くなってしまう。
備考:かつて地図に記載されていた「オイテケ堀」では、釣り人が魚を釣って帰っていた。十年程前の事で今は跡形もない。
場所に関しては、ここでは、お竹蔵の堀、割下水の内という説と、地図に記載されていた「オイテケ堀」が提示されています。
割下水の内というのは錦糸堀のことでしょう。
詳しくは前の記事をご参照ください。
kihiminhamame.hatenablog.com
本所辺りには堀が多かったようで、一箇所に限らず、よく魚が釣れる堀で、「おいてけ、おいてけ」の噂が広まったのでしょうね。
それにしても、ここでは、魚を釣らなくても、魚を持って通っただけで、「おいてけ」なのですね。
魚だけではなく、揚げ物までとは、キツネさんが主なのでしょうか?
三、夜更の馬鹿囃子[小松川の狸囃子]
内容:夜中に近くや遠くで馬鹿囃子が聞こえる。
備考:本所深川の多くの川や水路に伝わる響きと、風に送られる音が合わさって起きた現象か。馬鹿囃子の本場の葛西の練習の音や、両国広小路の見世物小屋の鉦(かね)太鼓の音が伝わったか。
馬鹿囃子が聞こえる要因については、『陰陽外伝磐戸開』とは全く別の説が唱えられています。
kihiminhamame.hatenablog.com
「馬鹿囃子」というのは、元は祭り囃子の一種のことで、葛西で盛んだったそうです。
「小松川の狸囃子」とも言われてるようですが、小松川は本所から少し東の方にある地名です。
四、竪川(たてかわ)の送り提灯[竪川の送り拍子木]
内容:小雨が降る晩など、竪川の岸を歩くと、少し離れて真っ白な提灯が後ろからついてくる。止ると提灯も止まり、進めば提灯も進み、後退すれば提灯も後退する。捕らえようと追いかけても逃げるので正体がつかめない。
または、人の姿が見えないのに「カチーリ、カチーリ」と拍子木の音だけが後ろをついて来る。
浮世絵では別々に描かれていた「送り提灯」と「送り拍子木」が一まとめに紹介されています。kihiminhamame.hatenablog.comkihiminhamame.hatenablog.com
ここでは、浮世絵と異なり、提灯は先導するのではなく、後から付いて来るとのことです。
浮世絵では出村町・割下水での怪異とされていましたが、ここでは明治大正の資料と同じく竪川での怪異となっています。kihiminhamame.hatenablog.com
もう、こうなったら、提灯の灯りが見えると同時に、拍子木の音も聞こえることにしちゃいましょうよ(笑)
五、足洗い屋敷[天井の大足][古竹蔵の足洗い屋敷]
場所:津軽家、お竹蔵近辺の屋敷
内容:夜中に天井から泥だらけの毛が生えた脛(すね)がぶら下がって、キレイに洗ってやらないと引っ込まなかった。
え?毛が生えた?
うるさい。
場所に関しては、津軽家での怪異と紹介され、明治大正の資料と同じ「お竹蔵」説も提示されています。kihiminhamame.hatenablog.com
津軽家に関しては別の本所七不思議でも登場するのでお楽しみに♪
まだ残り10ありますが、長くなったので、次回に続く!
三つ目コーナー
タヌキにもキツネにもカエルにも騙されないよ!
あ、足???
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