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人の花散る疱瘡の山 その1 ~井原西鶴『懐硯』巻一の五~

 

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今回も井原西鶴の作品を紹介したいと思います。

今回紹介するのは、『懐硯《ふところすずり》』(貞享四[一六八七]年刊)という作品です。

『懐硯』は、伴山《ばんざん》という半分一般人半分法師のような人物が、諸国してそこで見聞きした話をまとめたという設定の、短編小説集です。

今回は、前回紹介した話と関連がある、巻一の五「人の花散る疱瘡の山」という話を紹介するわけです。

※下に現代語訳と解説があります。

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懐硯. 第1 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
※画像は拡大できます。

【原文】

 人の花 散《ち》る疱瘡《はうそう》の山 

「懸崕《けんがい》嶮《けわ》しき處《ところ》生涯《しやうがい》を捨つ。
 暮鐘《ぼしやう》孰《たれ》が爲《ため》に帰家《きか》を促《もよふ》さん」
 扇子《あふぎ》に空《むな》しく留《とゞ》む二首《にしゆ》の歌、
「白菊《しらぎく》と 信夫《しのぶ》の里の 人問ハゞ 思ひ入江の 嶋と答へよ」

[「思い入」→「入江」→「江の島」と掛かっている。「信夫」は「忍ぶ」「偲ぶ」の意も含むか]
 と聞こえし鎌倉山かまくらやま》。
「明《あ》けもすらん」と道急《みちいそ》ぐ旅人《りよじん》も爰《ここ》の氣色《けしき》に立ち止まり、其の墓《つか》に哀《あわ》れを催《もよふ》しぬ。
 都《すべ》て世の常《つね》無き様《さま》ハ、由有る者ゝ名のミ残りて、幾人《いくたり》か消へ、「如水沫泡炎《によすいまつぱうゑん》」と御経《おきやう》にハ説《と》き給ふ理《ことわり》、思ひ続けて行けば、日蓮《にちれん》上人の土《つち》の籠《ろう》、今ハ妙久寺《めうきうじ》の庭《にわ》に形《かたち》有りて、星降《ほしくだ》りの梅枝《うめがえ》、経《ふ》りながら、いと殊勝《しゆしやう》に、匂《にほ》い殊更《ことさら》に、異《こと》なる花の眺め、桜に勝りて人の山を崩《くづ》しぬ。

 其の中に、色形《いろかたち》優れ、「此の生《う》まれつき、鄙《ひな》の都《みヤこ》ハ是なるべし。」と人の機《き》を奪ふ美少年《びしやうねん》、若黨《ワかとう》二三人召し連れ、嬋娟《せんけん》たる容色《ようしよく》、見る者《もの》、假初《かりそめ》にも悩《なず》まざるハ無かりき。

【現代語訳】

 巻一の五「人の花は疱瘡の山で散る」

 自休蔵主《じきゅうぞうす》というは、白菊という稚児胸キュンになり、猛烈にアプローチしますが、困った白菊は、

「『白菊はどこですか?』と信夫《しのぶ》の里の人[自休蔵主は信夫郡福島県)の人]がお聞きになったら、『思い詰めて江の島入り江に沈みました』、と答えてください」

 などという悲しい歌二首扇子に残して、に身を投げました。

 自休蔵主も、

「こんな断崖絶壁《だんがいぜっぺき》の場所で、あなたはを捨ててしまった。

 夕暮れを告げる鐘の音は、帰宅を促《うなが》しているのだろうか?」

 と詠んで、同じようにに身を投げたのでした。

 このような伝説が残る鎌倉[伴山]はやってきました。

「もう夜が明けてしまう」と路を急ぐ旅人も、ここの景色を見ると立ち止まり、白菊の墓を見ては、哀れに思わざるをえないのです。

 全てが無常世の中なので、何か功績を残した人々でも残るのはだけで、その人々自体の存在は消えてしまうのです。

「如水沫泡炎《にょすいまっぽうえん》[世の中は一定ではなく、水の泡や炎のように不安定]お経で説かれているのはもっともなことです。

 そのようなことを思い続けて歩いて行くと、日蓮上人が捕らえられていた土牢《つちろう》[土を掘って作った牢屋]が、今も妙久寺《みょうきゅうじ》に残っていました。

 日蓮上人ゆかり星降《ほしくだ》りの梅の木もあり、その枝ぶり古木でありながらとても立派で、特に良い匂いがします。

 この珍しいの眺めはよりも優れているので、妙久寺には見物人のように押しかけては帰って行くのでした。

 その大勢の見物人の中に、容姿がひときわ優れていて、

「このの生まれついての美しさは、こんなド田舎なのに、まるで都の人のようだ。」

 と人々にして、人々魂を奪うような美少年がいました。

 若い奉公人二三人召し連れていて、そのあでやかで美しい容姿を見た者は、必ずZokkon命《ゾッコンラブ》になるほどでした。

【解説】

 稚児ヶ淵の伝説導入部分で語られ、同じ鎌倉にある日蓮上人ゆかりの寺梅見物に、主人公と思われる美少年登場するという流れです。

 稚児白菊を投げた場所が、稚児ヶ淵と呼ばれています。
 ここでは、稚児ヶ淵の伝説を、読む人が当然知っているという前提で書かれているので、補足を加えながら現代語訳しました。

 妙久寺というお寺は、実際には鎌倉にはなく、日蓮上人の土牢は、竜口寺というお寺にあります。

 佐渡に流される途中の日蓮上人殺害計画が起こりますが、突然から梅の木に落ちて来て、大混乱となって殺害計画は流れてしまいます。
 その、星が落ちた梅の木星降《ほしくだ》りの梅と呼ばれています。
 星降りの梅と呼ばれる梅の木は、実際には、妙純寺、蓮生寺、妙伝寺などにあります。

 ちなみに、光則寺というお寺には、日蓮の弟子の日郎が捕らえられていた土牢があり、日蓮日郎に送った手紙『土牢《つちろう》[籠]御書《ごしょ》』石碑があり、ではありませんが海棠《かいどう》古木名物です。

 まあ、妙久寺は、西鶴の創作でしょう。
 別々の所にある日蓮上人の史跡一か所にまとめたかったのですかね。
「妙」日蓮宗お寺でよく使われるです。
 ちなみに、「妙」と言えば、「妙なミョウ・ガール」というとても面白いアニメがあるので、必ず観なきゃダメだと思いますヾ(๑╹◡╹)ノ"
www.nicovideo.jp

 なんで、最初に稚児ヶ淵の伝説が語られたのか?
 稚児ヶ淵の伝説男色のお話
 そう、このお話は、男色のお話なのです。

 続く

 江の島とか知っている地名が出て来ると、興味がわいてくるねヾ(๑╹◡╹)ノ"

 お前ほど江の島が似合わない奴もいないけどなヾ(๑╹◡╹)ノ" 

 

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