『伽婢子《おとぎぼうこ》』[浅井了意作、寛文六(一六六六)年刊]巻三の三「牡丹灯籠」
※国文学研究資料館所蔵 (CC BY-SA)
新日本古典籍総合データベース
【原文】
芙蓉《ふよう》の眥《まなじり》、鮮やかに、楊柳《やうりう》の姿、嫋《たを》やか也。
桂《かつら》の眉墨《まゆずミ》、緑の髪、言ふばかり無く艶《あで》やかなり。
荻原、月の下《もと》に是《これ》を見て、
「是ハそも、天津少女《あまつをとめ》の天下《あまくだ》りて、人間に遊ぶにや、龍の宮の乚姫《をとひめ》の渡津海《わだつうミ》より出て、慰《なぐさ》むにや、誠に人の種《たね》ならず」
と覚えて、魂飛び、心浮かれ、自ら抑《おさ》へ留《とゞ》むる思ひ無く、愛《め》で惑《まど》ひつゝ、後ろに従ひて行《ゆ》く。
前《さき》になり、後《あと》になり、艶《なま》めきけるに、一町《いつちやう》バかり西の方にて、彼の女、後ろに返り見て、少し笑ひて言ふ様《やう》、
「自《ミづか》ら人に契りて待ち侘《わ》びたる身にも侍らず。
只《たゞ》、今宵の月に憧《あこが》れ出て、漫《そゞ》ろに夜更け方、帰る道だに凄《すさ》まじや。
送りて給《た》べかし」
と言へば、
【現代語訳】
女は、蓮の花のような目元が鮮やかで、柳のような姿がしなやかでした。
三日月のように描いた眉《まゆ》、ツヤのある黒髪は、言うまでも無く、美しく上品です。
荻原は、月の下でこの女を見て、
「それにしても、これは天女が天から降りて来て、人間の世界に遊びに来たのか、龍宮の乙姫が大海から出て、楽しんでいるかのようだ。
とても人間から生まれたとは思えない美しさだ」
と思いました。
そして、荻原の魂は飛び、心は浮かれて、自制心もなくなり、すっかりメロメロになって、女の後ろに付いて行きました。
前に行ったり、後ろ行ったりして、なにげにアピールしていると、一町《いっちょう》[約一〇九メートル]ぐらい西まで行った所で、その女は後ろを振り返り、少し笑って、
「私には約束した人がいて、ずっと待っていたわけではありません。
ただ、今夜の月に心を惹《ひ》かれて、なんとなく外に出たら、すっかり夜が更けてしまったのです。
女だけでは帰り道が怖いので、どうか家まで送ってくださいませんか」
と言いました。
【解説】
あらまあ、荻原さん、亡き妻のことはすっかり忘れて、美女を一目見てメロメロになり、ストーキングを始めてしまいます。
女性もストーキングに気づいたようですが、まんざらでもないようで、家まで送ってくれるように頼みますが、、、。
やっぱ、この美女、怪しいですよね。
弱っている人の心に、物の怪は入り込むと言いますからねえ。。。
挿絵は美女が振り返って荻原に声を掛ける場面です。
色が塗ってありますが、これは元の持ち主の落書きです。
僕が夜中に色気を振りまいて歩いていると、みんな叫んで逃げてくんだけど、何でだろう???ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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