お七は吉三郎のもとに忍んで行こうとしますが。。。




『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]
好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション
【原文】【現代語訳】
方丈《はうぢやう》に行きてみれども、彼の児人《せうじん》の寐姿《ねすがた》見えねバ、悲しくなつて、臺所《だいどころ》に出ければ、
お七は、方丈《ほうじょう》[住職の部屋]に行ってみたのですが、あの児人《しょうじん》(吉三郎)の寝姿が見えないので、悲しい気持ちになりながら、台所に出ました。
姥《うば》目覚《めさ》まし、「今宵《こよひ》鼡《ねずミ》めは」と、呟《つぶや》く片手《かたて》に椎茸《しいたけ》の煮染《にし》め、揚げ麩《ふ》、葛袋《くづぶくろ》など取り置くもおかし。
すると、庫裏姥《くりうば》が目を覚まし、
「今夜はネズミの奴がうるさいこと」
と、お七なのにネズミだと勘違いして呟きながら、ネズミにかじられないように、シイタケの煮しめ、揚げ麩、葛袋などを片付け始めたので、おかしなものです。
暫《しば》し有つて我《われ》を見付けて、
「吉三郎殿の寐所《ねどころ》は、其の/\小坊主《こぼうず》と一つに三畳敷《さんでうじき》に」
と、肩《かた》叩いて小話《さゝやき》ける。
しばらくしてから、お七を見つけて、
「吉三郎殿の寝室は、ほれ、その小坊主(新発意)と一緒の、三畳敷の部屋じゃ」
と、肩を叩いてささやきました。
思ひの外なる情《なさ》け知り、「寺《てら》にハ惜《お》しや」と、愛《いと》しくなりて、してゐる紫鹿子《むらさきがのこ》の帯《をび》解きて取らし、
庫裏姥が、思いのほかに、情けを知る者だったので、
「寺に置いておくのは惜しい人材」
と、愛おしくなって、締めていた紫鹿子の帯を解いて与えました。
姥《うば》が教へるに任かせ行くに、夜《よ》や八つ頃なるべし、常香盤《じやうかうばん》の鈴《ずゞ》落《を》ちて、響き渡る事暫《しばら》くなり。
庫裏姥に教えられた通りに行くと、夜の八つ頃[午前2時頃]のようで、常香盤[香が燃え尽きると糸が切れて鈴が落ちる仕掛けの香盤]の鈴が落ちて、しばらく響き渡っていました。
新発意《しんぼち》其《そ》の役《やく》にや有りつらん、起《お》き上がりて、糸《いと》掛け直《なを》し、香《こう》盛り継《つ》ぎて、座《ざ》を立《た》ゝぬ事とけしなく、
新発意の役目なのでしょうか、起き上がって糸を掛け直したり、香を盛って足したりして、その場をなかなか動こうとしません。
寐所《ねどころ》へ入るを待ちかね、女の出来心《できごゝろ》にて、髪《かミ》を捌《さバ》き、怖ひ皃《かほ》して、闇《くら》がりより脅《おど》しければ、
お七はイライラして、新発意が寝室に戻るのを待ちきれず、女の出来心(ふとした良くない思い付き)で、髪をほどいて振り乱し、怖い顔をして暗がりから脅かして、新発意をどかそうとしました。
石流《さすが》佛心備ハり、少しも驚く氣色《けしき》無く、
「汝元来《なんぢぐハんらい》[死者に引導を渡す際の決まり文句]、帯《をび》解け広げにて、世に徒者《いたづらもの》や、忽《たちま》ち消《き》え去れ。
此の寺の大黒《だいこく》に成《な》りたくバ、和尚《をせう》の帰らるゝ迄 待《ま》て」
と、目を見開き申ける。
新発意は、さすが仏門に入った者だけあって、少しも驚く様子はなく、
「お前はそもそも、帯を解いてあけっぴろげにして、なんともふしだらな奴じゃ、すぐに消え去れ。
この寺の大黒[僧侶の隠し妻]になりたいのならば、和尚(住職)が帰られるまで待て」
と目を見開いて言いました。
お七 白《しら》けて走り寄《よ》り、
「此方《こなた》を抱《だ》いて寐《ね》に来た」
と言ひければ、
お七は気まずくなって、
「お前を抱いて寝に来た」
と言ったので、
新発意《しんぼち》笑《わら》ひ、
「吉三郎様の事か。
俺と今迄《いままで》跡差して臥ける。
其の證據《しやうこ》には是ぞ」
と、小服綿《こぶくめ》の袖《そで》を翳《かざ》しけるに、白菊《しらぎく》など言へる留木《とめき》の移り香、
新発意は笑って、
「さては、吉三郎様に会いに来ましたな。
吉三郎様なら、俺とついさっきまで、足を絡めて寝ておった。
その証拠は、ほれ」
と言って、小服綿《こぶくめん》[僧侶の平服]の袖をかざすと、吉三郎が焚《た》きしめていたと思われる、白菊などという香木の移り香がしました。
「どふもならぬ」と打ち悩ミ、其の寐間《ねま》に入るを、
「ああ、もう、どうにもこうにも、我慢できない、むはー」
と、お七は身悶《みもだ》えして、吉三郎の寝室に入ろうとしました。
新発意《しんぼち》声《こゑ》を立《た》て、
「はあ、お七様、良い事を」
と言ひけるに、
すると、新発意は、大きな声で、
「はあ、お七様、良い事をなさるのですな」
と言ったので、
又 驚《おどろ》き、
「何ニ而《て》も、其方《そなた》の欲しき物を調《とゝの》へ進《しん》ずべし、黙り給へ」
と言へば、
お七はとても驚き、
「なんでも、お前の欲しい物を買ってあげるから、お黙りなされ」
と言いました。
【解説】
吉三郎の寝室が見つけられないお七さんでしたが、庫裏姥も気が利いていて、吉三郎の寝室を教えてくれます。
しかし、吉三郎に会えるまであと少しという所で、新発意(小坊主)が立ちはだかります。
新発意が吉三郎のお世話と警備をしてるんでしょうね。
ハラハラする場面のはずですが、西鶴らしく、なんかコントみたいに滑稽に描かれています。
はてさて、お七は無事、吉三郎に会うことができるのでしょうか?
ん?なんか三つ目から質問があるみたいです?
三つ目コーナーに続く。
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ねえねえ、お七さんはなんで最初は住職の部屋に行ったの?ヾ(๑╹◡╹)ノ"![]()
そりゃあ、吉三郎は住職の部屋にいると思ったからじゃない?ヾ(๑╹◡╹)ノ"![]()
なんで、お七さんは吉三郎が住職の部屋にいると思ったの?ヾ(๑╹◡╹)ノ"![]()
そりゃあ、吉三郎が「児人《しょうじん》」だからだよ。
いつもは住職と一緒に寝てるんだろうけど、住職がお出かけだったから、小坊主と一緒に寝てたんだろうね。ヾ(๑╹◡╹)ノ"![]()
「児人」ってなに?ヾ(๑╹◡╹)ノ"![]()
西鶴もわざとハッキリ書いてないから、あえて言わない!!!ヾ(๑╹◡╹)ノ"![]()
(小人《しょうじん》で検索したら、何か分かるかも。というかタグにw)
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