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[8]ついに二人は結ばれるのでした ~『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」~

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 吉三郎が目の前ですが、新発意(小坊主)が邪魔なので、お七は口止めとして、新発意に欲しい物を聞きます


 

 

 

 


好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」[貞享三(1686)年刊、井原西鶴作]
好色五人女 5巻 [4] - 国立国会図書館デジタルコレクション



【原文】【現代語訳】

「其れならバ錢《ぜに》八十と、松葉屋の骨牌《かるた》と、淺草《あさくさ》の米饅頭《よねまんぢう》五つと、世に是より欲しき物は無ひ」
 と言へば、
「それならば、銭《ぜに》八十文[一両を十万円とすると二千円]と、松葉屋のカルタと、浅草の米饅頭《よねまんじゅう》五つをくだされ。
 世の中でこのほかに欲しい物はありませぬ」
 と、小坊主(新発意《しんぼち》)は言いました。

「其れこそ易《やす》い事、明日早/゛\遣はし申すべき」
 と約束《やくそく》しける。
「それはそれは容易《たやす》いこと、明日、すぐにでも届けましょう」
 と、お七は約束しました。

 此の小坊主《こぼうず》、枕《まくら》傾け、
「夜《よ》が明たらバ、三色《みいろ》貰《もろ》ふはず、必《かなら》ず貰《もら》ふはづ」
 と、夢《ゆめ》にも現《うつゝ》にも申し、寐入りに静まりける。
 この小坊主は、枕に頭を乗せて横になり、
「夜が明けたら、三品貰うんだ、必ず貰うんだ」
 と、ムニャムニャと夢現《ゆめうつつ》につぶやきながら、寝入って静かになりました。

 其の後ハ心任せになりて、吉三良 寐姿《ねすがた》に寄《よ》り添《そ》ひて、何共《なにとも》言葉《ことば》無く、しとげなく〈しどけなく〉凭《もた》れ掛ゝれば、
 そのあとは、お七の思うがままになって、吉三郎の寝姿に寄り添って、何も言わずに、なよなよと、もたれかかりました。

 吉三良 夢覚《ゆめさ》て、猶《なを》身を震ハし、小夜着《こよぎ》の袂《たもと》を引き被りしを引き退《の》け、
「髪《かミ》に用捨《やうしや》も無き事や」
 と言へば、
 吉三郎は目を覚まして、そのまま身を震わせて、小夜着[掛け布団]の袖を引っ張って頭から被りました。
 お七はそれをめくって、
「頭からかぶったら。髪型が乱れてしまいますわよ」[若衆の命である前髪を気にかけている]
 と、言いました。

 吉三良切なく、
「私《わたくし》ハ十六になります」
 と言へば、お七、
「私《わたくし》も十六になります」
 と言へば、
 すると、吉三郎はどうしようもなくなって、
「私は十六歳になります」
 と言うと、お七は、
「私も十六歳になります」
 と、言いました。

 吉三良重ねて、
「長老様《ちやうらうさま》が怖や」
 と言ふ。
「俺《をれ》[この頃は女性も普通に一人称として「俺」を使用していた]も長老様ハ怖し」
 と言ふ。
 吉三郎は続けて、
「長老様(住職)が怖いです」
 と言うと、お七は、
「私も長老様が怖いです」
 と、言いました。

 何とも此の恋始めもどかし。
 なんとも、こういう恋の始まりというものは、もどかしいったらありゃしないです。

 後ハ二人ながら淚《なミだ》を零《こぼ》し、不埒《ふらち》なりしに、又 雨《あめ》の上がり神鳴《かミなり》荒けなく響きしに、
「是ハ本に怖や」
 と、吉三良にしがみ付きけるにぞ、
 それから二人とも涙を流して、どうにもこうにもなりませんでしたが、その時、雨の上がり際に、また雷が荒々しく鳴り響いたので、
「これは本当に怖いです」
 と、お七は吉三郎にしがみつきました。

 自《をの》づから理無《わりな》き情《なさ》け深く、
「冷へ渡りたる手足や」
 と、肌へ近寄せしに、
 すると、吉三郎は、自然とお七のいじらしさに愛情が深まり、
「手足が冷え切っていますね」
 と、自分の肌に引き寄せました。

 お七恨ミて申し侍るハ、
「其方様《そなたさま》にも憎からねバばこそ、由無《よしな》き文給はりながら、斯《か》く身を冷やせしハ、誰《た》がさせけるぞ」
 と、首筋《くびすじ》に喰《く》ひ付きける。
 お七は恨みがましい様子で、
「あなた様も私のことを憎からず思っておられたからこそ、あのようなエチエチな手紙を送ってくださったのでしょうに、なかなか抱きしめてもくれずに、ここまで私の体を冷たくしたのは、一体、誰のせいでしょうかねえ」
 と言って、首筋にしがみつきました。

 何時《いつ》と無く訳《わけ》も無き首尾《しゆび》して、濡れ初《そ》めしより、袖《そで》ハ互《たが》ひに、「限りハ命《いのち》」と定《さだ》めける。
 それからいつのまにやら合体して、初めて結ばれた二人は、袖を互いに交え、「命ある限りは!」と誓ったのでした。

 程《ほど》無く曙《あけぼの》近く、谷中《やなか》の鐘《かね》忙《せハ》しく、吹上《ふきあげ》の榎《ゑ》の木、朝風《あさかぜ》激しく、
 ほどなく夜明け近くになり、谷中の感応寺《かんのうじ》の鐘がせわしなく鳴らされ、吹上の榎《えのき》の大木に、朝風が激しく吹き付けました。



 【解説】

 お七が脅そうしていた時は、僧侶らしい毅然《きぜん》とした態度を見せた小坊主(新発意)ですが、欲しい物は、お小遣いとおもちゃとお菓子という、まだまだお子様なんですね。

 これでやっと、お七さんの思いが叶って、吉三郎の寝室にたどり着くことができました。

 これまで手紙だけで実際に言葉を交わしたことはなかったので、最初はオウム返しのやりとりで、モジモジとじれったいですが、まあ、なんだかんだで、吉三郎と同じようにフンドシを締めている雷様のお導きで[章題「虫出しの神鳴も褌掛きたる君様」参照]、二人は結ばれるわけです。

 なんか、お七さんは初めてじゃない気がしますが、吉三郎は女性相手は初めてな感じがします。

 この次のページに挿絵が入ります。


【挿絵】



 右ページは吉三郎の寝室に向かうお七です。
 庫裏姥《くりうば》に帯を与えたので、お七は帯をしておらず、着物を手で押さえています。

 左ページは小夜着をかぶって寝る吉三郎と、常香盤の手入れをする新発意(小坊主)です。

 ちなみに、色が付いている部分がありますが、ただの落書きです。


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 ねえねえ、なんで長老様が怖いの???ヾ(๑╹◡╹)ノ"

 そりゃあ、吉三郎にとっては、浮気みたいなもんだからねえヾ(๑╹◡╹)ノ"


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