玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。
【原文】
「幾入《いくしほ》に 染め返してか 紫の 四方《よも》の梢《こずゑ》を 染め渡すらん」となん書き付けられける。残りハ姫君書ゝせ給ふ。
扨《さて》、其《そ》の日に成りて合ハせ給へバ、色〻心を尽くして詠ミ出で、えならぬ枝色を整へ給へ共《ども》、姫君のに並ぶも無かりけり。
五度《ごたび》合はせ給へども、度毎《たびごと》に姫君ぞ勝たせ給ひける。此の事隠れなく、内にも聞こし召され、かの紅葉御召し有り。
「惜しミ給ふべきかハ」とてやがて参らせ給ひけれバ、帝《みかど》叡覧《ゑいらん》在《ましま》して、やがて其の姫君参らせ給ふべき由、時の関白に仰せ下されけれバ、
「定めて参らせ給ハんことハ悦び成るべけれど、宰相《さいしやう》微《かすか》か成る住居《すまひ》にて侍れバ、出だし立てんこと難《かた》くや」
と申させ給えば、やがて心得させ給ひて、三箇所《さんかしょ》を賜《た》びにけり。
予《か》ねて願ひし事成るに、悦び給ふ事、限りなし。やがて其の御営み目出度《めでた》かりけり。玉水の前の御気色《ごきそく》類《たぐひ》無し。
津の国 角田《かくた》といふ所をぞ玉水の寿《ほか》い所[?]に賜《た》びにけり。
「我が身は無縁の身成れバ、たゞ哀れをかけさせ給ハんこそ嬉しう侍らめ。斯様《かやう》の御事ハ、思ひ掛け侍《はんべ》らず」
と度/\申し返し奉れども、様/\恨み仰せられけれバ、「さらバ」、父母悦ぶこと斜《なの》めならず。
有る時、かの母、物ゝ怪《け》めきて、悩ミ渡る。多くの祈りをしけれ共《ども》、月日重なるまゝに
【予習の答え】
色々心をつくしてよミ出えならぬ枝色を
とゝのへ給へ共姫君のにならふもなかりけり
【現代誤訳】
「何回染め重ねたら、このような美しい紫色になるのでしょうか。もうすぐ、あちらこちらの紅葉の枝先も、紫の葉でいっぱいになることでしょう。あの方の心の中も私でいっぱいにしたいものです」
と姫君は五つの色の葉の枝に、玉水が詠んだ五首の歌を付けました。
残りの枝には、姫君が歌をお書きになりました。
さて、紅葉合わせの当日になりました。
どなたも色々と工夫を凝らして歌を詠み、素晴らしい紅葉の枝を用意したのですが、姫君の紅葉の枝に適(かな)うものはありませんでした。
五回勝負しましたが、五回とも姫君がお勝ちになりました。
この事は、あっという間に宮中にも知れ渡り、帝(みかど)は姫君の紅葉の枝を献上するように仰せ付けました。
「よろこんで!」と姫君はすぐに紅葉の枝を帝に献上なさると、帝はご覧になって、とてもお気に召されたようで、
「すぐにこの姫君を参内(さんだい)[宮仕え]させなさい」
と当時の関白に仰せ付けました。
関白は、
「きっと喜んで参内されると思いますが、何しろ高柳の宰相のお家はボンビーでございますので、参内のご用意をするのが難しいと思われまして」
と帝に申し上げなさいました。
帝はすぐに配慮なされ、荘園(しょうえん)を三箇所、高柳の宰相にお与えになりました。
姫君を参内させるのが、高柳の宰相ご一家の長年の夢でしたので、とてもとても喜びました。
すぐに参内のご用意は立派に整いました。
玉水の前[忘れてると思いますが、玉水のフルネームね]の活躍も素晴らしいということで、摂津(せっつ)の国の角田(かくた)[現在の大阪]という所の田んぼが与えられました。
「私は天涯孤独の身でありますので、このようなお情けをかけていただいて、たいへん嬉しゅうございます。
しかしながら、このようなご配慮をいただくのは、身分不相応でございます」
と何度も辞退する旨をお伝えしましたが、帝も何度も
「受け取らなければ私の気が済まない」
とおっしゃったので、玉水は、
「そうまでおっしゃられるのでしたら」
とこの田んぼをいただき、養父と養母にプレゼントした所、養父と養母はマンモスうれピー♪
ところがある時、その養母が物の怪[化け物]に取り憑かれたかのように、病に倒れました。
さまざまな加持祈祷(かじきとう)を行いましたが、日に日に
【解説】
要するに、「紅葉合わせ」は、紅葉の品評会といった所でしょうか。
「合わせ」は「試合」の意ですね。
どちらの紅葉が優れているか、競うイベントのようです。
エッチなイベントを期待された方、残念でした(笑)
これまで養母しか出てこなかったのですが、しれっと初めて養父の存在が示されましたね。
紅葉合わせに勝利し、参内も叶ってハッピーエンドに向かうかと思いきや、玉水の養母が病気になるという急展開!
次回で上巻が終わりです!
次回の予習
養母の願いです。
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