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玉水は何処へ??? ~『玉水物語』その23~

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玉水物語 2巻 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
※この記事では、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの画像を、適宜改変して使用しています。

【原文】

 扨《さて》、御内参りに紛れに車に乗る由にて、何方《いづち》ともなく失せにけり。
 殿にハ「内に御供なり」と思す。
 内にハ「心地悪しと常に言ひしかば、里に留まりぬらん」と人々は思ふ。
 姫君も歎かしく「如何《いか》に成りつるぞ」と心許のふ思し召し、二・三日過ぎて、何方へも無し由聞こへければ、親の方、爰《ここ》かしこ尋ねさせ給へども、行方も知らず。
 五日・十日の程は「さり共、聞ゝ出《いで》ん。余所《よそ》よりや帰り来ん」と待ち給へども、見えねば、「何処《いづく》に失せぬるぞ。人の隠したるか」と覚し給ひければ、御悦《およろこ》びに御心の内の御歎きぞ増させける。
 諸卿の女房達、打ち託《かこ》ち歎き合ひけり。
 何事につけても、「此の人の有らましかバ」と思しける。
 宰相殿は中納言にぞ成り給ひける。
 玉水の事常に名高くいミじき事もあれば、「如何に成りぬる事ぞ」と歎き給ふ。
 姫君ハ此の箱の中 床《ゆか》しく思さるれども、御門[帝]の御座《おハ》します事絶へず、暇無くて明かし暮らし給ふに、有る時、官の廰[庁]《てう》へ御幸《みゆき》有り。
 良き暇とて覚しめし、忍びて開けて御覧ずれバ、始めより終ハりの事を書き付けたり。
「こハ如何に成る事ぞ」と御胸《おむね》内騒《うちさハ》ぎ、恐ろしくも哀れにも覚し

【予習の答え】

扨御内参りのまきれに車にのるよしにていつち
ともなくうせにけり

【さっくり現代語訳】

 さて、玉水姫君参内《さんだい》のどさくさに紛れて、牛車に乗るように見せかけて、どこへともなく消え失せてしまいました。
 当然、高柳様のお屋敷では、
玉水さん姫君と一緒に宮中に行かれたのだろう」
 と思っていました。
 宮中では、
玉水さんはずっと体調が悪いとおっしゃってたので、まだ高柳様のお屋敷にいらっしゃるのでしょう」
 と、みんな思っていました。
 姫君玉水の姿が見えないのでお嘆きになり、
「どうなさったのでしょう?」
 と不安にお思いになりました。
 二・三日が過ぎて、玉水お屋敷にも宮中にもいないことが分かったので、玉水の養母の家など、あちらこちら捜したのですが、行方不明でした。
 五日から十日の間あたりは、
「そうは言っても、居場所はそのうち分かるでしょう。どこかからふらっと帰ってくるでしょう」
 と姫君はまだ余裕を持って待っていましたが、いつまでたっても玉水は姿を見せないので、

「どこに行ってしまったのでしょう?
 誰かに誘拐でもされてしまったのでしょうか?」

 とお思いになり、参内が叶ったことはお喜びになっているものの、お心の中の嘆きは増すばかりなのでした。

 他の女房達も、あらゆるシチュエーションで、
玉水さんがいらっしゃったらすぐに解決するのに」
 と口々に玉水の不在を嘆き合うのでした。
 高柳の宰相《さいしょう》様中納言におなりになりました。
 高柳様玉水の名声がとても高いことをご存じなので、
「どうなってしまったのだ」
 とお嘆きになるのでした。
 姫君例の箱の中が気になってしかたないのですが、がずっと一緒にいらっしゃるので、を開けるチャンスがないまま、月日が過ぎていくのでした。
 ある時、太政官《だじょうかん》の役所にお出かけになるご用事がありました。
 姫君は、
「ナウ・ゲッタ・チャンス!」
 とお思いになり、こっそり「ニン!」を開けて中の手紙をご覧になりました。
 そこには、キツネの玉水姫君に一目惚れして女房に化けた、一部始終が全て書き付けられていました。
 姫君は、
「マ、マ、マジかよ。。。」
 と心の中ザワザワなさって、恐ろしくお思いになりながらも、玉水の事が哀れにもお思いに

【解説】

 細かいことですが、本文中に「御内参り」などとあるので、「参内」と訳していますが、意味合い的には「入内《じゅだい》」の方が良いかもですね。
 要は姫君帝の妻になったわけです。
 まあ、何人いるか知りませんが、高柳様中納言昇進して、めでたしめでたしというわけです。
 宰相[参議の別名]は、太政官の役職で、上から、太政大臣左大臣・右大臣・大納言・中納言・参議[宰相]というランクがあり、高柳様一階級昇進ということですかね。
 天皇の妻には、上から、皇后・中宮・女御《にょうご》・更衣《こうい》[※ちなみに光源氏の母親は桐壺更衣]ってランクがあったみたいですが、姫君だと女御あたりですかね。

 スマホとかも無くて連絡網も発達していない時代ですから、玉水がいなくなったことが判明するまで、やはり数日はかかってしまうのですね。
 この手の神隠も、日常茶飯事だったのかもしれません。

 さて、姫君はついに箱の中の手紙を読んで、玉水の正体を知ってしまいました。
 物語の終焉《しゅうえん》まであとわずかです。

次回の予習

玉水の手紙にはまだ続きがあるようです。
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三つ目コーナー

何、描いてるの?

薄い本。

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