それでは、『金玉ねじぶくさ』巻七の二「蛙も蛇を取る事」を読んで行きましょうヾ(๑╹◡╹)ノ"
霞亭文庫書誌詳細
※この記事では霞亭文庫の画像を適宜改変して使用しています。
【原文】
蛙《かへる》も蛇《へび》を取る事
唐土《もろこし》にハ鴆《ちん》と言ふ鳥《とり》有りて、一切有情《いっさいうじやう》の大毒《だいどく》なれバ、一日に千里《せんり》を走る猛虎《もうこ》も僅《わずか》か雀《すゞめ》程なる鴆を恐れて竹の林を城郭とせり。
竹ハ又、鴆の為大毒にて、藪《やぶ》有る上《うへ》を飛びぬれバ、己《おのれ》と落《お》ちて死するとかや。
此《こ》の鳥、江に降りて水を飲めバ、一切諸鳥、毒有らん事を恐れて其《そ》の水を飲まず。
山より犀《さい》と言ふ獣《けだもの》出て、又、其の水を飲みぬれば、毒を消《せう》せん事を計《はか》つて、其れより諸鳥も飲むとかや言ひ傳《つた》へ侍り。
然《しか》れども、其れは見ぬ唐土の沙汰《さた》、近《ちか》くハ虵《へび》・蛙《かわづ》・蝸牛《くわぎう》の三敵《さんかたき》とて、蛙《かへる》ハ蝸牛《くわぎう》を取り、蝸牛《くわぎう》ハ蛇を害《がい》し、虵《へび》は蛙《かわづ》を取る事、草《くさ》打つ童子《わらんべ》まで、皆人知れる所なり。
或《あ》る人の庭先《ていぜん》に荒れたる泉水《せんすい》有り。
水の汀《ミぎハ》に菖蒲《あやめ》・真薦《まこも》生《お》い茂《しげ》りたる中に、蛇 数多《あまた》集《あつ》まり、彼《か》の泉水に臨《のぞ》んで、毎日、蛙《かへる》を二つ三つ取らぬ日も無く、見るに気の毒なれども、何《なに》と制すべき様《やう》無く、一切有情《いつさいうじやう》の夫々《それ/゛\》の業《ごう》を果たく[果たす?]事を感じて暮《くら》らしぬ。
【現代語訳】
「カエルだってヘビを倒すという話」
中国にはチンという鳥がいて、全ての生き物に対して、すごい毒を持ちます。
なので、一日に千里を走るという阪神タイガース猛々《たけだけ》しい虎も、わずかスズメぐらいの大きさのチンを恐れて、竹林を城郭として身を潜めました。
なぜなら、竹はチンに対してすごい毒を持ち、竹林の上をチンが飛ぶと、チンは自然に落ちて死んでしまうそうです。
このチンが川に降りて水を飲むと、ほかの鳥は、チンが飲んだ水には毒があるだろうと恐れて、その水を飲みませんでした。
しかし、山からやって来たサイというケモノが、そのチンが飲んだ水を飲むと、毒が消えるらしいという事が分かって、それからほかの鳥もその水を飲むようになったと、言い伝えられています。
そうは言っても、これは聞いただけで見た事がない中国での事です。
日本の例だと、ヘビ・カエル・ナメクジの三敵《さんかたき》と言って、カエルはナメクジを捕り、ナメクジはヘビを殺し、ヘビはカエルを捕る事は、草を打って遊ぶ子ども[「草を打って蛇を驚かす」「草を打って蛇に驚く」という慣用句を踏まえたか]でさえ、みんな知っていることです。
さて、ある人の家の庭先に、荒れた池がありました。
水辺にアヤメやマコモが生い茂り、その中にヘビが集まって隠れ、そこから池を眺めて、カエルを二匹三匹と毎日のように必ず捕って食べるのでした。
その家の人は気の毒に思いましたが、どうすることもできず、全ての生き物が背負っている、前世の報いの結果なのだと痛感して暮らしていました。
【解説】
え?キン〇マの次はチンなの?ヾ(๑╹◡╹)ノ"
うるさい。
チンという鳥に関しては興味深いので、また改めてちゃんと書こうかなと思います。
ヘビ・カエル・ナメクジの三敵《さんかたき》は、いわゆる「三竦《さんすく》み」というやつで、要するに、ヘビ(グー)・カエル(チョキ)・ナメクジ(パー)のように、ジャンケンに置き換えればわかりやすいですね。
※「蝸牛」は一般的には「カタツムリ」のことを指しますが、ここでは「ナメクジ」のことを言っています。
チンと三敵の前置きがあって、やっと本編に入るのですが、アヤメやマコモが生えた池の描写は、
五月雨《さみだれ》に 沢辺の真薦《まこも》 水越えて いづれ菖蒲《あやめ》と 引きぞ煩《わずら》ふ
(五月雨で増水し、沢辺のマコモも水に浸かってしまい、アヤメと区別がつかなくなったので、アヤメを引っこ抜きたいのに、どれを引っこ抜けばいいか分からなくて困ります)
という『太平記』の有名な歌を意識しているのかもしれませんね。
さて、因業《いんごう》のせいなのか、毎日のようにヘビに食べられるカエルなのですが。。。
次回、いよいよ三本足のカエルの登場です!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
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