【前回までのあらすじ】
人間の百物語で人間を呼び出し、驚かしてやろうとした大入道たち。
しかし、現れた人間は化け物の天敵、「暫」の主人公(坂田金時)こと白猿(市川蝦蔵)だったのです。
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
化物夜更顔見世 2巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション (6ページ目です)
※画像は拡大できます。
【原文】
大入道、人間に天井を見セんと謀《はか》りしが、合点《がつてん》違ひ、敵役《かたきやく》さえ嫌気《いやき》の暫《しバらく》、化け物にハ猶《なを》禁物《きんもつ》。
大入道、たま/\面《つら》を出して叩《はた》くかと思ひしが、白猿《はくゑん》野暮《やぼ》でもなく、大入道が子供二人を、床の置物にでもする気やら、入道に貰ひ、その代わり、「大事な所だが、この所ハ互いにいざさらバ」とか何とか、仲良く別るゝ。
「子供を進ゼますから、今ゝでの事ハうやなやにしてよ、白猿さん」
「おいらが大事の光を人間に取らるゝハ、すごすご、御仁《ごじん》の揉《も》める種蒔《たねま》きだわヱ」
「輩《から》でさへ知つてるお前を、わづか箱根から先の私らが、知らねへでどうするものだ」
「姉様、ワシもお前も、人間の方へ捕らわれとなるのか、悲しや/\」
「もしも人間にでもなつたら、この上も無ひ恥じや」
【現代語訳】
大入道は、引っくり返って天井を見るくらい人間を驚かせようと企《たくら》みましたが、思惑《おもわく》と違い、現れたのは敵役《かたきやく》の役者でさえ嫌がる「暫《しばらく》」の主人公を演じる白猿《はくえん》で、化け物にとっては更に共演NGな人物です。
こんなことになるとは大入道は思ってもおらず、白猿に顔をひっぱたかれるとでも思いきや、白猿は融通《ゆうずう》が利かない人ではありません。
白猿は、大入道の二人の子どもを床の間の置物にでもするのか貰い受け、その代わり、「ただでは済まぬ所だが、今日は勘弁してやる、ここでさらばじゃ」とかなんとか言って、表向きは仲良く別れたのでした。
大入道「子どもを差し出しますから、これまでのことは見逃してよ、白猿さん」
大入道「ワシの大事な光のような子どもたちを、人間に取られてしまうとは、ガッカリじゃ。
このままでは、あの方との揉め事の種になるなあ」
白猿「そんじょそこらの奴でさえよく知っているお前がすることを、箱根からちょっとだけ先にいる私らが、知らねえとでも思っていたのか」
大頭小僧「お姉さま、私もあなたも、人間に捕らわれの身となるのですね。もう、悲しゅうて、悲しゅうて」
ろくろ首「もし、このまま⼈間として⽣きることになったら、この上もない恥となるのう」
【解説】
本来ならこのまま白猿に退治されてしまうはずの大入道は、自分の子どもを人質(化け質?)として差し出すことによって難を逃れます。
あれ?あれだけ意気込んでいた川太郎、とっと逃げてしまったみたいで姿が見えませんね(笑)
最初の所にはいなかった化け物が一匹います。
すり鉢の化け物がいたから、これはスリコギの化け物ですね。
白猿のセリフ「わずか箱根から先の私ら」は、「野暮と化け物は箱根から先」ということわざをふまえています。
この当時、野暮[無風流な者]と化け物は箱根から西に住んでいると考えられていました[箱根から西は田舎という事]。
白猿が人間を超えた化け物寄りの存在だから「わずか箱根から先の私ら」と言っているのか、それとも坂田金時こと金太郎が暮らしていた足柄山《あしがらやま》が箱根の近くだからこう言っているのか?
大入道の子どもは、ろくろ首[姉]と大頭小僧[弟]のようですが、父親に全く似ていませんね(笑)
「もしも人間にでもなったら、この上も無い恥じゃ」と嘆くように、化け物には化け物のプライドがあるようです。
はてさて白猿に貰われていった二匹の化け物は一体どうなってしまうのでしょうか?
なにか揉め事の原因になるようなことを大入道は言っていますが???
【三つ目からの挑戦状~くずし字クイズ(前回の答え)】
「うやなや」という言葉、円満な様子を表すんだけど、今では聞き慣れないから、「うやむや」と間違えそうだね。
【三つ目からの挑戦状~くずし字クイズ(正解は次回)】
ヒント
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※北見花芽の中の人も少しだけ担当しています。
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