【前回までのあらすじ】
遊郭の化けの里で、越後の大入道の跡を継いだ今入道と、丹後のヒヒの養子の見越入道は、新屋の毛女郎を巡って争いになりました。
見越入道は諦めて引き下がったようですが、今入道が親から貰った目をくりぬいて毛女郎に渡しているのを、ヒヒのスパイの手水鉢の化け物に見られてしまい。。。
※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
大昔化物双紙 2巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション (8ページ目です)
※画像は拡大できます。
【原文】
見越入道は今入道に大きに凹《へこ》まされしかバ、親分の狒《ひ》ゝ、大きに腹を立ち、
「年寄つての里通いは余りでかさぬ事ながら、見越が恥を雪《すゝ》がん」
と新屋の毛女郎を揚《あ》げ詰《ず》めにしておく。
「ヤイ小僧、如何《いか》に年が行《ゆ》かぬとて、親の譲りし一つの目を、毛女郎のために刳《く》り貫《ぬ》き、何をもって化け物ゝ大将となるぞ。
此の上は入道とは呼ばぬ、やつぱり元の一ッ目小僧だ/\/\」
と悪口《あくかう》する。
ヒヒ一首哥
「化け多《おふ》き化けが中にも化けぞあり 化けになれ化け 化けになれ化け」
今入道、狒ゝに見付けられ、色/\悪口《あつかう》され、無念がる。
「出まいぞ/\ぞ」
「出ゝはならぬハいのふ」
【現代語訳】
見越入道が今入道に散々ヘコまされたので、養父のヒヒは大そう腹を立て、
「いい年になってからの遊郭通いは褒《ほ》められたことではないが、見越入道のリベンジをせねばならぬ[汚名を晴らさねばならぬ]」
と新屋の毛女郎を買いっぱなしにして、自分以外の座敷に出さないようにしました。
「やい小僧、いかにまだ若輩者とは言え、親から譲られた一つの目を、毛女郎のためにくりぬくとは、化け物大将になるべき者がすることではないな。
これからはもうお前を入道とは呼ばぬ、やっぱりお前は元の一つ目小僧だ!」
と、ヒヒは今入道を罵《ののし》るのでした。
ヒヒが詠んだ歌、一首。
「多くいる化け物の中にも、化け物の中の化け物はいる。
化け物の中の化け物になれ!
化け物の中の化け物になれ!」
今入道はヒヒに身柄を確保され、散々罵られて、悔しがります。
今入道「化けの里から出て行くものか!」
毛女郎「そうです、今入道さん、出て行ってはなりませぬ」
【解説】
毛女郎、早速、譲られた一つの目を顔につけていますね。
どうも、上巻と下巻の間で、見越入道は、今入道に毛女郎との仲を見せ付けられたのか、ションボリヘコまされてしまったようです。
それに怒ったヒヒは、金に物を言わせて毛女郎を自分のものにしてしまいます。
遊女は所詮《しょせん》、客相手の商売、自由に好きな人と一緒になることもできません。
化け物の話にしてごまかしていますが、実は遊郭勤めの悲しさが描かれているのです。
意外やヒヒは暴力で今入道を征圧するかと思いきや、言葉攻めで打ちのめします。
なんだかんだで、ヒヒが言っていることは正論なので、今入道は罵られても何も言い返すことができません。
和歌を数える単位は[ヒヒのは和歌と言うより狂歌なのですが]、「一首、二首、」というように「首《しゅ》」です。
「百人一首」とか言うでしょ♪
「化け物ならば、化け物の中の化け物になれ」と、ヒヒは歌っています。
「男の中の男」のように「化け物の中の化け物」もいるようで。
今入道に対して皮肉めいて言っているのと同時に、自分がその「化け物の中の化け物」だということを今入道に知らしめています。
化け物大将の資格である一つの目を失った今入道に対し、このあとヒヒはどのような仕打ちをするのでしょうか?
次回に続く。
【一つ目からの挑戦状~くずし字クイズ(前回の答え)】
【一つ目からの挑戦状~くずし字クイズ(正解は次回)】
ヒント
みんなもう慣れてきたと思うから、長めにしてみたよヾ(๑╹◡╹)ノ"
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