うきよのおはなし~江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ~

江戸文学の楽しさを皆さんにお伝えできれば♪

当ブログは広告・PR・アフィリエイト等を含みます。

むし その2

当ブログは広告・PR・アフィリエイト等を含みます。

それでは、左ページを読んでいきましょう。
わかりやすいように四つに分けました。
f:id:KihiminHamame:20171018133154j:plain 

f:id:KihiminHamame:20171018133228j:plain
国会図書館の画像を利用しました。
詳細画像は国会図書館のホームページで。
国立国会図書館デジタルコレクション - 皐下旬虫干曽我 : 3巻
4ページ目です。


はこね山のべつとう行実
にはへまむしといふ虫がたかり
はこねには湯場がちかく
にあるとはいひながら
とかくゆへはいつてあつ
たまることがすきになり
よるもすへふろをたてゝ
はいるゆへこれ
よりへまむし
夜入湯とも
又へまむし夜入道
ともいひならはせたり

又、箱根山別当・行実には、「へま虫」といふ虫がたかり、箱根には湯場が近くにあるとは言ひながら、とかく湯へ入つて温まることが好きになり、夜も据へ風呂を立てて入る故、これより「へまむし夜入湯」とも、又、「へまむし夜入道」とも言ひ習はせたり。

一方、箱根山別当・行実(ぎょうじつ)には、「へま虫」という虫が取り付いて、箱根山には温泉場が近くにあるとは言っても、とにかくお湯に入って温まることが好きになり、夜も家風呂にお湯を沸かして入るので、これから「へまむし夜(よ)入湯」やら「へまむし夜(よ)入道」やら言われるようになった。

箱根の温泉は今でも有名ですね♪
別当とは箱根山で一番えらい役職です。
「へま虫」「ヘマムショ入道」をもじった言葉です。
そうです、私が興味を持ったのは「ヘマムショ入道」が出てきたからです。
どんなふうに「ヘマムショ入道」が出てるんだろうと、ついつい読んでしまった次第です(笑)
「ヘマムショ入道」は当時流行っていた絵文字の落書きです。
以前紹介したように、作者の京伝は、『怪談摸摸夢字彙(かいだんももんじい)』「ヘマムショ入道」を妖怪として登場させています。 
kihiminhamame.hatenablog.com

『怪談摸摸夢字彙』京伝の連想からだと「ヘマムショ入道」怠け者というイメージにつながるので、「へま虫」にはそういう意味合いも含まれていると思われます。
また、「入道」「入湯」と言い換えるのもお気に入りの洒落だったようで、以前紹介したように、同じ『怪談摸摸夢字彙』「見越入道」をもじった「見越入湯」という妖怪を登場させています。
kihiminhamame.hatenablog.com

「夜」にも風呂に入るので、「ヘマムショ」「ヨ」「夜」という字を当てたのも、京伝の洒落っ気です。
ちなみに「入道」は坊主頭の者のことです。



とぢぼう丸には
ひだるむしといふ
むしがとりつき
ことのほかこん
じやうがいやしく
なりとかくふもとへ
出てゆでたての
さつまいもとう
もろこしのつけやき
及ぜにめなもの
ではてんふらなど
をしてやりけるゆへ
やたいみせに大きくかりができせんかたなく
当山のじうもつ友切丸をぬすみ出して
うりしろなしこれをはこわうにぬり
つけんとはかるこれみなひだるむしの
しわざにてにくむべきの
はなはだしきなり

閉房丸には「ひだる虫と」いふ虫が取り付き、事のほか根性が卑しくなり、とかく麓へ出て、茹で立てのサツマイモ・トウモロコシの漬け焼き、及、銭目な物では天ぷらなどをしてやりける故、屋台店に大きく借りが出来、詮方なく、当山の什物・友切丸を盗み出して、売り代成し、これを箱王に塗り付けんと謀る。
これ皆、「ひだる虫」の仕業にて、憎むべきの甚だしきなり。

箱根山の稚児・閉房丸(とじぼうまる)には「ひだる虫」という虫が取り付いて、とても食べ物にがめつくなりました。
とにかく山の麓に降りて、茹でたてのサツマイモやトウモロコシの漬け焼きだけでなく、高価な天ぷらなども食べまくるので、屋台店への支払いが滞ってしまいました。
どうしようもなくなって、箱根山の宝物の友切丸という刀を盗み出し、売った金を得て、犯人は箱王丸に仕立て上げようと企みました。
これは皆、「ひだる虫」の仕業で、憎んでも憎みきれないものです。

ここでは閉房丸がどういう人物か書かれていませんが、箱根山の稚児ということは当時の読者は書かずともわかっていたのでしょうね。
稚児とは、「髪を剃っていない少年の修行僧」のことです。
稚児は、男色の対象となったのですが、それについては長くなるので、また機会があれば。
「ひだる虫」「ひだる神」のもじりですね。
「ひだる神」に取り付かれると、お腹が減って仕方なくなるそうです。
私も夜中に「ひだる神」によく取り付かれます(笑)
ちなみに歌舞伎の『助六は、助六(実は曽我五郎)友切丸を探すお話です。


「アゝ
いゝゆだ
なん
まみだ
/\
づぶ
/゛\」

(行実)
「ああ、いい湯だ。なんまみだ、なんまみだ。づぶづぶ。」

行実「ああ、いい湯だなあ。なんまんだ、なんまんだ。(湯船に浸かる音)」

行実のセリフです。
この頃から、湯加減がいい時は「いい湯だ」って表現を使っていたのですね、アハハン♪



「よひしゆび
/\」

(閉房丸)
「良ひ首尾、良ひ首尾。」

閉房丸「うまくいった、うまくいった」

閉房丸のセリフです。
行実は、のんきに風呂に入っている間に刀を盗まれてしまうのですね。
「へま虫」には、「しくじる」という意味の「へま」もかかっていると思われます。

一応、テキトーな訳をつけましたが、漢字に直して句読点を付けたものでも、結構、意味わかりますよね。
くずし字のせいで難しく見えますが、なんだかんだで、やっぱり、子供向けなんですね。

とまあ、冒頭の二ページ分を見てみたわけですが、もちろん、これだけ読むのに力尽きて、この先は読んでいません(笑)
メジャーな山東京伝の作品なので、私みたいにバカみたいにくずし字を読まなくても、たぶん活字になっている本があると思いますので、続きはそちらでご覧くださいませ(笑)


kihiminhamame.hatenablog.com

 

◆北見花芽のほしい物リスト

www.amazon.co.jp

◆オススメ書籍
江戸の男色文学を紹介するエッセーなどが掲載されています!
男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉

男色を描く: 西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉

 
はてなIDをお持ちでない方も、拍手で応援していただけたら嬉しいです♪

web拍手 by FC2

◆よろしければ はてブ もお願いします。憧れのホットエントリー(笑)