堺に行った一代女の奉公先は、とある家のご隠居様の所で、布団の上げ下ろしをするだけの仕事だよ!
では、続きを読んで行きましょう♪
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 好色一代女. 巻4
17ページ目です。
【原文】
喜びて連れ帰る道(みち)すがら、早、我(わが)ためになる心得を言ふて聞(きか)されける。
其皃(かほ)は悪(にく)さげなれども優しき心入れ。
「世間(せけん)に鬼(おに)は無し」と嬉(うれ)しく耳(みゝ)をすまして聞(きく)に、
「第一、内(うち)方は悋気(りんき)深し。
面(おも)屋の若(わか)い衆(しゆ)と物云(いふ)事も嫌(きら)ひ給ふなり。
其れ故、人の情(なさけ)らしき噂(うわさ)は申すまでも無し。
鶏(にはとり)の分けもなき事も見ぬ皃(かほ)をするぞかし。
法花宗(ほつけしう)なれば、仮にも念仏(ねんぶつ)を申さぬが良し。
首玉(くびたま)の入りし白猫(しろねこ)、御秘蔵なれば、譬(たと)へ肴(さかな)を引(ひく)とても、追(おわ)ぬ事なり。
面(おもて)の奥(おく)の大(おほ)きに出られて、横平(わうへい)なる言葉(ことば)は、尻(しり)に聞(きか)し給へ。
初めの奥(おく)様の召し連れられし「しゆん」と言ふ腰元(こしもと)めを、奥様時花(はやり)風にてお果(はて)なされました後(のち)、旦那(だんな)物好(ずき)にて、あれがよ
【ざっくり現代語訳】
その家に長く勤めている乳母と思われる老女[姥(うば)]が、喜んで私を連れ帰ることになりました。
姥はその道中、早速、私が奉公する上で必要な心得を聞かせてくれました。
姥は憎らしい顔をしていますが、顔とは違って優しい心遣いです。
私は「橋田壽賀子は『渡る世間は鬼ばかり』と言うが、実際は『渡る世間に鬼はなし』なのだなあ」と嬉しく耳を傾けました。
(姥のセリフ)
「そもそも、ご隠居様は嫉妬深い方で、仲居女が面屋[おもや]の若い男の奉公人と話すことさえ嫌がります。
なので、無用のトラブルを防ぐために、人の色恋の噂などをするのはもってのほかで、ニワトリがちちくりあうことさえ見てみぬふりをするのが良いでしょう。
また、宗旨は法華宗なので、間違っても念仏だけは唱えないでくださいませ。
それから、首輪を付けた白猫を大事にされているので、たとえ魚を取ってもサザエさんみたいに追っかけないでくだされ。
面屋の奥は態度がでかくて横柄な口を利きますが、耳からではなく、尻からでも聞いて聞き流しておけばよろしい。
今の奥は最初の奥様が連れてきた腰元の「しゅん」という者で、最初の奥様が流行り風邪でお亡くなりになってから、物好きな旦那様が奥にされたのですが、
【解説】
「内方」という言葉、ちょっと曖昧でして、「旦那」のこととも「奥様」のこととも取れるのですが、ここでは思い切って「ご隠居様」のこととして訳しました!
でも、やっぱ、西鶴を研究してる人から怒られそうなので(笑)、
「そもそも、旦那様は嫉妬深い方で、奥が面屋の若い男の奉公人と話すことさえ嫌がります。」
と訳した方がいいですかね。
このあたり、もうちょっと調べてみて、また改めて考えてみたいと思います。
どちらにしても、この家には「ご隠居様」と「面屋」=「店を継いだ息子[旦那]と奥様」がいるのは確かなようです。
西鶴の文章は細かいところでも凝っていて面白いですよね♪
「その顔は悪さげなれども優しき心入れ」とか褒めながらもディスってたり(笑)
姥が前の奥様は「奥様」と言っているのに、今の奥様には「様」をつけないで「奥」と呼び捨てにしているのも面白いですね(笑)
前回のクイズの答え!
「錦の町の中浜」はここ!
「人置の善九郎」があったのは、「錦之町の中浜という西側」なので、このあたりですかね?
ひょっとしたら実在のお店がモデルだったかもしれませんね。
ちなみに「錦之町」という町名は現在でも残っており、道割りも当時の面影を残しているので、現在の地図と見比べてみると面白いと思います。
近くの方は行ってみて、今はどんな感じか教えてください(笑)
今回のくずし字クイズ!
次回に紹介するページからの出題です!
ヒント!
絶対に読めると自分を信じれば読めるはずです!(笑)
信じるものが救われることなんて滅多にないんだよなあ。。。
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