こないだの『カチカチ山』を調べている時に、kihiminhamame.hatenablog.com
滝沢馬琴作『燕石雑志[えんせきざっし]』巻四を見ていたのですが、そこで紹介されていた『猿蟹合戦』の絵本の一場面が、非常に気になりまして、今回、取り上げることにしました。
そういえば、『カチカチ山』と『猿蟹合戦』って構成が似た話ですよね。
国立国会図書館デジタルコレクション - 新制小学国語読本出典文抄
※高画質の画像はこちらでご確認ください。→ 燕石雑志. 巻之1-5 / 滝沢觧 述
上掲の『燕石雑志』巻四で紹介されているのは、当時流通していた『猿蟹合戦』の絵本の一部だと思われ、おそらく現在、大東急記念文庫に所蔵されている絵本と同一のものかなと思うのですが、ちゃんと確認はしてません、テヘペロ。
あ、『燕石雑志』は、文化8[1811]年刊で、お伽噺などを馬琴が分析した随筆です。
で、引用された図版は、ラストのサルがカニの敵を討たれる所なのですが、、、
タコ???
『猿蟹合戦』にタコなんて出てきたっけ???
タコイラストレーターの北見としては見過ごせません!(笑)
というわけで、読んでみましょう。
【翻刻】
かくとも◆しらで◆さるいろ◆里へより◆ければ◆
ぢぶんハ◆よしと◆たまごは◆つちりとは◆
ねてさるのきん玉へあたる◆こハかな しやとぬか◆
ミそ 桶へかゝる所をほう◆丁 まなはし◆
ぐす◆と◆つら◆ぬ◆く◆こゝ◆かし◆こ◆
よりく まんばちと◆なめら へびまきつい◆て◆
さすさ らハにけかへらん◆とするに◆
てぎね さるの◆あたまを したゝかに◆
うつあら めにすべつて◆ころふ所を たてうす魚楽と◆
いふミにておさへけるついに かにかた◆
きをうつ◆いづれものおてがらじよ◆
ひらきからうちだし◆まで大はね/\◆
大あたり◆/\
こゝに又た◆このいもほり◆
ハおかへあがる所を此年月さるにけんぞく
をとられひだことなしたる◆
うらミ此時也とてごぼう◆
やいてさるのしりへおつ◆
つけとゞめをさす
たてうすわれらが◆はたらき中村◆
介ときていま◆せうがやおんて◆
きほろびたれば◆まづ今日はこれ迄
【原文】
かくとも知らで、猿は色里へ寄りければ、「時分ハ良し」と、卵はツチリと撥《は》ねて、猿の金玉へ当たる。
「こハ悲しや。」と糠《ぬか》味噌桶へ掛ゝる所を、包丁・真魚箸《まなばし》、グスと貫く。
こゝかしこより、熊蜂《くまんばち》とナメラ蛇、巻きついて刺す。
「さらバ逃げ帰らん。」とするに、手杵《てぎね》、猿の頭を強《したゝ》かに打つ。
荒布《あらめ》に滑つて転ぶ所を、立臼《たてうす》、魚楽《ぎよらく》という身にて押さへける。
終《つい》に蟹、敵《かたき》を討つ。
いづれ者、お手柄、序開《じよびら》きから打ち出しまで、大跳ね/\、大当たり/\。
ここに又、蛸の芋掘りハ、「陸《おか》へ上がる所を、此の年月、猿に眷属《けんぞく》を捕られ、干蛸《ひだこ》と為《な》したる恨ミ、この時なり。」とて、牛蒡《ごぼう》焼いて猿の尻へ押つ付け、止《とゞ》めを刺す。
立臼、「我等が働き、中村介と来ていませうがや。
怨敵《おんてき》滅びたれば、まづ今日はこれまで。」
【ざっくり現代語訳】
こんなこととも知らないで、サルは遊郭へやってきたので、「時は来た!」と、まず、タマゴがプチっとはねて、サルの金玉に当たります。
「こりゃ痛いっ!」と、サルがヤケドを冷やそうとヌカ味噌桶に寄り掛かる所を、包丁とマナ箸がグサリと突き刺します。
その上、ナメラヘビが巻きついてきて、クマンバチが刺します。
「これはかなわん」と、サルは逃げ帰ろうとしますが、手杵《てぎね》が頭を思いっきり打ち付けます。
更に、アラメに滑って転ぶ所を、魚楽《ぎょらく》[二代目中村助五郎の俳名]になりきった立臼[たてうす]が乗っかかって押さえつけます。
とうとう、カニの敵《かたき》を討つことができたのでした。
みんな、始めから終わりまで、よく出来ました!
一方、芋を掘るタコは、
「陸へ上がる所をサルに捕らえられ、干蛸にされた仲間の、長年の恨みを晴らすのは今じゃ!」
と言って、ゴボウを焼いてサルの尻に押し付け、トドメを刺しました。
[立臼のセリフ]
「我々は、中村助五郎並の活躍ができましたな!
めでたく敵を討てたので、今日はこれにて解散!」
【解説】
にしても、意図せずにまたもや金玉を連発してしまっているわけですが、BANされないか心配です(笑)kihiminhamame.hatenablog.com
中村助五郎は当時人気の役者だったようです。
臼の顔は中村助五郎の似顔絵になってるのかしらん?
俳名[歌舞伎役者が俳句を詠む時に使う名前]を魚楽としたそうですが、俳名といえば、前にも出てきました!
覚えてらっしゃるでしょうか?
kihiminhamame.hatenablog.com
で、問題はタコです。
注目すべきは、タコはカニの敵討ちに来ているわけではないということです!
仲間を干しタコにされた恨みを、カニの敵討ちに便乗して晴らしているのです。
いやあ、サルはどうも色んなところで恨まれることをしていたようですね(笑)
にしても、なぜゴボウ?
タコ料理にはゴボウがつきものなのかしらん???
なぜかタコだけ、墨を吐くとかの自分の特性を出してないんですよねえ。
やっぱり、タコの存在が謎です。。。
もちろん、『猿蟹合戦』でカニの敵を討つ仲間たちは、作品によって色々なパターンがあるようです。
私が子どもの頃読んだのでは、滑らすのは馬糞だったような気がします。
とりあえず、『猿蟹合戦』にはあまりかかわりたくないので、これ以上深追いはしません!
だって、私の学生時代の指導教授が『猿蟹合戦』の専門家でして、師匠と同じ事を研究するのは、どうしても嫌で避けたいもんなんですよ(笑)
今回はあくまでもタコにつられて取り上げたまでです!(笑)
ねえ、ねえ、「蛸の芋掘り」って何?
タコが陸に上がって芋を掘るという言い伝えがあるんだって。
へえ。
そういえばお前の頭、タコみてえだな。
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