鬼の角は毒消しになるらしい　～『桃太郎一代記』その12～ - うきよのおはなし～江戸文学が崩し字と共に楽しく読めるブログ～

【要約】

桃太郎は鬼ヶ城の門を押し破って内部に突入しました。
門番の鬼は人質にしました。
サル「言う事聞かないと、その一本しかない角をもいで、漢方薬屋に売っちまうぞ！」
イヌ「命は助けてやるから、先導して内部を案内をしろ！」
門番の鬼「うへえ、ありがとうございます、その通りにいたします、ｶｸﾌﾞﾙ」

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北尾政美（きたおまさよし）画『桃太郎一代記』天明元［一七八一］年刊
桃太郎一代記 5巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。

【翻刻】【補足表記】【現代語訳】

もゝ太良◆いわやのもん◆をしやふり◆うちへいる◆もろこしの◆はんくわい◆わかてうの◆あさいな三良◆それにこの◆もゝ太良か◆おとるへ◆きか
桃太良、岩屋の門押し破り、内へ入る。唐土《もろこし》の樊噲《はんくわい》、我が朝《てう》の朝比奈三良《あさいなさぶらう》、それにこの桃太良が劣るべきか。
桃太郎は鬼ヶ城の門を押し破り、中へ入りました。中国の樊噲（はんかい）、日本の朝比奈三郎（あさひなさぶろう）といったヒーローに比べても、桃太郎は劣らないでしょう。

なにほと◆のことあ◆らんこの◆もんおし◆やふつてくれん◆いてものミ◆セんといふまゝに
こりや／＼／＼
「何程の事あらん、この門押し破つてくれん。いで物見セん」と言ふままに、
「こりゃ／＼／＼」
桃太郎「この門を押し破るのは、なんてことない、目に物を見せてやるわ！　えい、えい、えい！」

もんは◆んのおにひと◆しちにとられる◆おのれらハつのか一ほん◆つゝだいやといふ◆とつのをもい◆てきくすり◆やへやるが◆なんとた◆きやつとも◆いつてミろ◆おにこほるの◆つのハどくけしに◆なろう
門番の鬼人質に取られる。
「己《おのれ》らハ角が一本づゝだ。嫌と言ふと角をもいで生薬屋《きぐすりや》へ遣るが、何とだきやつとも［「なんだかんだと」の意。「きゃっ」は猿の鳴き声］言つてミろ、鬼毀《おにこぼ》るの角ハ毒消しになろう」
門番の鬼は人質に取られました。
サル「お前たちは角が一本だな。なんだかんだ嫌だと言ったら、その一本しかない角をもいで漢方薬屋へ売ってしまうぞ！　鬼からもいだ角は毒消しくらいにはなるだろうからな」

さきへたつて此◆うちのあんない◆をしろおのれ◆ら二ひいのいの◆ちハたすけてくれん
「先へ立って此の内の案内をしろ。己ら二匹の命ハ助けてくれん」
イヌ「先導して内部の案内をしろ。お前たち二匹の命は助けてやるから」

かしこまり◆ました　
「畏《かしこ》まりました」
門番Ａ「承知いたしました」

ありかたふ◆そんし◆まする
あかぼう◆もんをあけ◆てあけやれ
「有難ふ存じまする」「赤坊［？］、門を開けてあげやれ」
門番Ｂ「ありがとうございます。赤鬼さん［？］、門を開けておやんなさい」

【解説】

　お供の三匹が門番の鬼を捕らえているのをよそに、桃太郎は一人いきがって門を開けようとしています。
　門番の鬼は４対２では勝ち目がないと見たのか無抵抗です。
　戦力として疑問符がつくキジのセリフがとうとう無くなったのが、少し気掛かりではありますヾ(๑╹◡╹)ﾉ"

三つ目コーナー

僕は鬼の角より、やっぱ蚊の目玉が食べたいなあヾ(๑╹◡╹)ﾉ"

お前の目玉は薬になるかな？売れるかな？ヾ(๑╹◡╹)ﾉ"

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