御伽草子. 第19冊 (一寸法師) - 国立国会図書館デジタルコレクション
※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。
【原文】
夫婦、思ひける様《やう》ハ、
「あの一寸法師めを、何方《いづかた》へも遣《や》らバやと思ひける」
と申せバ、やがて一寸法師、此由《このよし》承《うけたまは》り、
「親にも斯様《かやう》に思ハるゝも、口惜しき次第かな。
何方へも行《ゆ》かバや」
と思ひ、
「刀無くてハ如何《いかゞ》」
と思ひ、針を一ッ姥に乞い給へバ、取り出し給《た》びにける。
即《すなハ》ち麦藁《むぎハら》にて柄《つか》鞘《さや》を拵《こしら》へ、
「都《ミヤこ》へ上らばや」
と思ひしが、
「自然、舟無くてハ如何あるべき」
とて、又姥に、
「御器《ごき》と箸《はし》を給べ」
と申し受け、名残惜しく止むれども、立ち出《い》でにけり。
住吉の浦より、御器を舟として打ち乗りて、都へぞ上りける。
「住み慣れし 難波《なには》の浦を 立ち出でてゝ 都へ急ぐ 我が心かな」
【現代語訳】
おじいさんおばあさん夫婦は、
「あの一寸法師のガキを、どっかにやってしまいたい思とります」
と思って、人に話しました。
やがて両親の嘆きは一寸法師の耳に入り、
「親にすら、こんな風に思われとるなんて、泣きとうなるわ。
もう、どこにでも行きまひょ」
と思いましたが、
「刀がないのはアカンわ」
と思い、針を一つおばあさんに求めました。
おばあさんは針を取り出して与え、一寸法師はすぐに麦藁《むぎわら》で柄《つか》と鞘《さや》を作り、
「都へ上りまっせ」
と思いました。
しかし、
「そや、舟があらへんかったら、どこにも行けまへんがな」
と、またおばあさんに、
「お椀と箸もくれまへんか」
とお願いしました。
両親は、
「ああは言ったもんやが、いざとなったら寂しいもんやなあ」
と止めましたが、一寸法師は家を出て行きました。
そして、一寸法師は、住吉の浦から、お椀を舟にして乗り込み、都に上りました。
「住み慣れた難波《なにわ》の浦からサイナラして、ワイの心はもう都に早く行きたくて仕方ないんやで」
【解説】
住吉の浦は歌にもよく詠まれる名所ですね。
一寸法師の読んだ歌では「難波の浦」となっていますが、ここでの「難波」は大坂全体を指す呼称でしょう。
一寸法師は住吉の浦から、淀川を上って、京都に行くルートを取ったみたいです。
一寸法師の事をボロクソに言いながらも、本心ではなく軽い冗談だったのか、いざとなると止めようとするおじいさんとおばあさん。
複雑な親心というかなんというか。
うつろ舟の正体が分かったぞ!
舟は食器、女性はお姫様、箱の中には一寸法師だね!
※wikipediaより
◆北見花芽のほしい物リストです♪
5月3日は北見花芽の誕生日ヾ(๑╹◡╹)ノ"
◆インフォメーション
※北見花芽の中の人も少しだけ付録CDで担当しています。
※付録CDに『武太夫物語絵巻』(『稲生物怪録』)が収録されています。
北見花芽愛用のくずし字辞典です。
◆北見花芽 こと きひみハマめ のホームページ♪
◆拍手で応援していただけたら嬉しいです♪
(はてなIDをお持ちでない方でも押せますし、コメントもできます)
◆ランキング参加してます♪ ポチしてね♪
◆よろしければ はてなブックマーク もお願いします♪
多くの方に読んでいただきたいので、少しでも拡散してくださるとありがたいです。