【前回のあらすじ】 とうとう頼母は式部を討ち、屋敷中が大騒ぎに。
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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。
【原文】【現代語訳】
馬淵八郎《まぶちはちらう》急ぎ燈《ともしび》持て来たり、先《ま》づ頼母に取り付きて抱《いだ》き留《とゞ》む。
馬淵八郎《まぶちはちろう》[オリジナルの『藻屑物語』『雨夜物語』では、「式台口の殿居(番司)、織田の何某、建部四郎」]が急いで灯火を持ってやってきて、まず頼母に取り付いて抱き止めました。
誠に其の夜の慌《あハ》ての事、言ハゞ更《さら》なり、筆にも及び難《がた》し。
実にその夜の大慌ての様子は、言うまでもなく、書くまでもありません。
軈《やが》て大殿、座敷を立ゝせ給へバ、残りの客人《きやくじん》も打ち連れて、立ち出でて見給ふに、只今《たゞいま》事の有り一間は、只《たゞ》朱《あけ》に染《そ》ミ返り、流るゝ血《ち》は龍田河《たつたがわ》の夕日に向かうが如くなり。
やがて、大殿(唐橋侍従)は座敷をお立ちになり、ほかの客人も連れて様子をご覧になると、事件現場となった部屋は、ただただ真っ赤に染まっていて、流れる血は龍田川の夕日を目の当たりにしているようでした。
暫《しバ》し有りて、大殿荒ゝかなる声をして、
しばらくして、大殿は声を荒らげて、
「所こそ折こそ有らんに、如何《いか》なる宿意《しゆくゐ》にても有れかし、上《かみ》を蔑《ないがし》ろにしたる事こそ心得ね」
「TPOというものを弁《わきま》えない上に、どんな恨みがあったか知らないが、このようなお上《かみ》を蔑《ないがし》ろにする行為をするのは、さっぱり訳が分からない」
とばかりの給ひ(宣ひ)て、奥深く入らせ給ふ。
とだけおっしゃって、屋敷の奥深くにお入りになりました。
即《すなハ》ち茨主殿司《いバらとのもつかさ》して、事の起こりを尋ねさせ給ふ。
そして、すぐに茨主殿司《いばらとのもつかさ》[オリジナルの『藻屑物語』『雨夜物語』では、「植松主殿司」]に、事の起こりを尋ねさせました。
頼母、膝《ひざ》を折り、手を付き、
頼母を膝を折って手を付き、
「此の上ハ兎角《とかく》言ひ上げまじけれども、御尋ねの上を否《いな》ミ奉るも憚《はゞか》り多し。
「この件に関しては、ああだこうだと申し上げるべきではないのですが、わざわざお尋ねになられてるのを拒否するわけにはいきませんので。
然《され》バ近き頃より然《しか》/゛\の事言ひ掛けられ、様/゛\戯《たはぶ》れ聞こえけれども、つや/\応《いら》へをだにせで、年頃過ぎ侍りし。
そもそも、最近、式部殿にカクカクシカジカなことを言われ、色々とふざけたことを聞かされましたが、全く返事もしないでそのまましばらく過ごしていました。
「憎し、つれなし」とて、只管《ひたすら》我を謀《たばか》り討つて、人の国へ往《い》なんと、道の程の用意《ようい》そこ/\に沙汰《さた》し侍る故《ゆへ》、
すると、式部殿は「憎たらしい、情け知らずめ!」と言って、ひたすら、私を騙し討って他国に逃げようという計画を立て、道中の用意もそれなりにして実行しようとしました。
「今ハ逃れぬ所」と、一筋に思い切り、御前近きも顧《かへり》見ず、恐れ入りて候得《さうらえ》ぬ。
私は「もはや逃れられない」と、ただ一筋に思い切って、このような行為に及んでしまいました。
御前近くであるにもかかわらず、とても申し訳なく存じます。
【解説】
あっさり確保された頼母さん。
侍従はお怒りの様子ですが、ひとまず茨主殿司に尋問させます。
頼母は特に虚偽の証言はしてませんね、あったことをそのまま言ってます。
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三つ目に尋問するけど、こないだの本の落書き、もう一つあったんだけど、なんで自画像を描いたの???

