明治時代の浮世絵の『本所七不思議』の続きだよ!
僕は「置いて毛」って言うよ。
By 歌川国輝 (3代目) - scanned from ISBN 4-3097-6096-4 Invalid ISBN., パブリック・ドメイン, Link
野久知橘筵作・歌川国輝画『本所七不思議』(明治十九[1886]年刊)
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本所七不思議之内 / 昇旭斎国輝 画
【翻刻】
本所七不思議之内 置行堀(おいてけぼり)
降(ふ)りミ降(ふ)らずみ薄雲(うすぐも)り如此成日(こういうひ)にこそ
釣人(つりびと)のケツク夛漁(たりやう)のものなると言合(いゝあ)わ
さねど此所(こゝ)彼所(かしこ)竿(さほ)をおろして釣(つり)たるゝ
更(さら)に余念(よねん)もなく烏(からす)早(はや)日(ひ)も西(にし)におちこちの往来(ゆきゝ)も稀(まれ)に成(なり)しかバ家路(いへぢ)をさして
帰(かへ)らんとす不思議(ふしぎ)や堀(ほり)に聲(こゑ)ありて
ヲイテケ/\ト云(いふ)は正(まさ)しく心(こころ)の迷(まよ)ひと
行(ゆか)んとすれハ足(あし)すくミ釣得(つりゑ)し魚(うを)は
いつしかにもぬけの空(から)のビクさげて漸々(やう/\)
家(いへ)に帰(かへ)るあり或(あるい)ハ堀(ほり)に落(おち)る在(あ)りとぞ
何程(なにほど)魚(うを)を釣(つる)とても置(おい)て行(ゆく)にハしかしト云(いふ)
葛西太郎の後音
野久知橘莚撰
【原文(補足表記)】※振り仮名の一部は省略しました。
本所七不思議の内 置行堀(おいてけぼり)
降りミ降らずみ薄雲り、如此成日(こういうひ)にこそ釣り人の、結句(ケツク)夛漁(たりよう)の物なると、言ゝ合わさねど此所(こゝ)彼所(かしこ)、竿(さほ)を降ろして釣りたるゝ、
更に余念(よねん)もなく烏(からす)[「余念も無く」と「鳴く烏」を掛けた]、早(はや)日も西におちこちの[「落ち」と「遠近(おちこち)」を掛けた]、往来(ゆきゝ)も稀(まれ)に成りしかバ、家路を指して帰らんとす、
不思議や堀に声有りて、「置いてけ/\」と云ふは、正(まさ)しく心の迷ひと、行(ゆ)かんとすれば足竦(すく)ミ、釣り得し魚(うを)は何時(いつ)しかに、蛻(もぬ)けの殻(から)の魚籠(ビク)下げて、漸々(やう/\)家に帰る在(あ)り、
或(あるい)は堀に落ちる在(あ)りとぞ、
何程(なにほど)魚(うを)を釣るとても、置いて行(ゆ)くにハ如(し)かじト云ふ。
葛西太郎の後音(こういん)
野久知橘莚(のぐちきつえん)撰(つく)る
【さっくり現代語訳】
本所七不思議の内 置いてけ堀(おいてけぼり)
「雨が降ったり止んだりする薄曇りの日こそ大漁になる」と釣り人たちは、言い合わせたわけでもないのに、堀のあちこちで竿を下ろして釣りをします。
夢中になって釣りをするうちに、カラスも鳴いて日も西に沈み、人の行き来も少なくなってきたので、家に帰ることにします。
すると、不思議な事に堀から「置いてけ、置いてけ」と声がします。
「これは心の迷いから、そんな声が聞こえるだけに違いない」と、無視して行こうとすると、足がすくんで動かなくなり、いつのまにか釣った魚が入った魚籠(びく)がカラッポになっていて、カラの魚籠をぶら下げて、やっとのことで家に帰る者がいるとか。
また、堀に落っこちる者もいるとか。
どちらにしても、この堀で魚を釣っても、魚を置いていくハメになると言います。
葛西太郎[料亭の名?]の後継者
野久知橘莚(のぐちきつえん)作
【解説】
まあ、魚が無くなるくらいならいいですが、堀に落っこちるのは嫌ですね。
江戸時代の妖怪カルタでは、半漁人みたいな姿で描かれていますが、ここでは幽霊っぽいですね。
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江戸時代の本所の地図ドン!しようと思ったのですが、堀の場所がどこか書かれていませんね。。。
置いてけ堀の場所に関しては、また改めて検証したいと思います。
それにしても「置いてけ堀」といい「心の迷い」といい、こないだまで取り上げた『亀山人家妖(きさんじんいえのばけもの)』と被ってますよね。kihiminhamame.hatenablog.com
作者の野久知橘莚さん、ひょっとしたら、『亀山人家妖』を読んでたのかもしれないですね。
三つ目コーナー
そういえば、北見花芽も妖怪カルタ作ったんだよね。
ああ、言うほど評判にならなかったから、忘れてたよ。(激しく憤慨)kihiminhamame.hatenablog.com
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